6歳でひとり舞台に立った『外郎売』――「あのときだからできた」
——映画の中で、6歳の新之助さんが襲名前に、お父さんとやっていた『外郎売』をひとりで演じる場面が印象に残りました。
新之助:なんであんなことができたんだろうと思います。いまだったら絶対無理です。
——急遽ひとりで舞台に立つことになったのですよね。
團十郎:私が『義経千本桜』の13役をやる『星合世十三團 成田千本桜』の初演の途中、咽頭炎で声が出なくなって休演してしまったのです。
そのとき、いまでは考えられないのですが、この子が「自分ひとりでやる、頑張る」と言って『外郎売』の舞台に立った。
私は病院で体に管が入った状態で、歌舞伎座の状態を把握できない3日間でした。
その3日間、この子がすごく頑張った。あの映像には泣きました。子どもながらに、本能的に危機を感じている様子がわかりますから。
周囲に「なんで今日はこんなに人がいるの?」と問いかけたり、撮影されないように振る舞ったりとか。「無理をさせたな」と思って、涙が止まらなかった。
いま、「あれをできるか」と聞いたら、「やる」とは言わないと思います。あのときだからできた、この子のポテンシャルだったのでしょう。

2019年、堀越勸玄としてひとりで舞台に立った『外郎売』





