江⼾三座の筆頭であった中村座を、現代によみがえらせたいという
十八世中村勘三郎さんの思いから、2000年に浅草に誕生した芝居⼩屋「平成中村座」。
舞台と客席が近く、役者と観客が一体となる特別な空間は、
日本各地や、海外で多くの歌舞伎ファンを魅了してきました。
今年10月には、4年ぶりに誕生の地・浅草でその幕が開きます。
ご当地を舞台にした『助六曲輪初花桜』をはじめとした、見応えのある演目がずらり。
そのなかで女方の大役を勤める中村七之助さんに、本公演の見どころを伺います。
今回は【前編】をお届けします。
その土地ならではの芝居がかけられる「宝箱」のような劇場
今年10月、平成中村座が4年ぶりに「平成中村座『十月大歌舞伎』」として東京・浅草寺境内で幕を開けます。
「平成中村座は、父が19歳のときに唐十郎さんの赤テントを観て、『これが芝居だ!』と衝撃を受けたことから始まっています。父が、その夢を45歳で実現させて、私たちにとって、とてもとても大切な場所。特に父が亡くなってからは、宝箱のような存在になりました」
舞台と客席の距離が近く、役者の息づかいまで感じられる平成中村座。その空間には、勘三郎さんが目指した「芝居の楽しさ」が詰まっています。そして、平成中村座は、移動ができる劇場であことも大きな魅力になっています。
「姫路城では『天守物語』、小倉では『小笠原騒動』と、その土地ならではの歌舞伎を上演してきました」
平成中村座『十月大歌舞伎』の大きな見どころのひとつ、華やかな人気狂言『助六曲輪初花桜』は、まさに浅草寺のある浅草が舞台です。
「皆さんが期待してくださっていることを、ひしひしと感じております。演目が発表された途端に、私の友達もざわつきました(笑)」
片岡仁左衛門さんが白酒売新兵衛役で特別出演(一部日程)するという発表も、多くの歌舞伎ファンを驚かせました。
「仁左衛門のおじ様は、10月は歌舞伎座の千穐楽まで出演され、そのあと平成中村座にも出てくださるんです。『面白いことをしよう』という心意気が素敵で、おじ様のような格好いい俳優になりたいと心から思います」
その仁左衛門さんの教えを受けて、今回の助六に初役として挑むのは兄・中村勘九郎さん。これは、七之助さんにとっても、大きな喜びとなりました。
「兄は助六をやらないのではと私は思っていたんです。助六は、たとえば『勧進帳』の弁慶と同じくらい、役への強い憧れが必要な役。『生涯をかけて助六を演じるために役者をやる』というくらいの大役なんです。その役に兄が手を挙げたときは、本当に嬉しかったですね」
七之助さん自身も、助六の恋人である花魁・三浦屋揚巻という大役を勤めます。これまで歌舞伎座ではすでに2度演じていますが、平成中村座で演じる揚巻は格別に感じているといいます。
「揚巻で花道に出て、ふっと振り返ったときに見える景色を想像するだけで痺れます」
筋書き上、助六と揚巻は、舞台で直接顔を合わせることはあまりありませんが、七之助さんには、とても楽しみにしていることがあるそうです。
「初日は、自分の最初の出番が終わったら、袖で兄の助六を見ようと思っています。花道から傘を差して出てくる姿を、しっかり目に焼きつけたいですね」




