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【60代エンタメ】尾上右近さん&中村隼人さんが熱く語る『仮名手本忠臣蔵』の魅力とは?「人間くささが面白い!」【インタビュー前編】

歌舞伎三大名作の一つとして知られる『仮名手本忠臣蔵』。2026年11月、歌舞伎座では昼夜にわたる通し狂言として上演されます。Aプロで塩冶判官、Bプロでおかるを勤める尾上右近さんと、Aプロ・Bプロを通して「五段目」「六段目」の早野勘平を初めて勤める中村隼人さん。武士の忠義を描く物語のなかには、立場や時代を超えて共感できる人間の弱さや愛情も息づいています。作品の持つドラマティックな力強さ、そして憧れの役への思いをおふたりに伺いました。

>>>インタビュー後編はこちら!

パワハラも嫉妬もある!? 現代に通じる『仮名手本忠臣蔵』のリアリティー

尾上右近さん

ジャケット ¥59,400、パンツ ¥33,000/ともにクルニ(クルニ フラッグシップ ストア)、その他/スタイリスト私物

——歌舞伎俳優にとって、『仮名手本忠臣蔵』はどのような作品なのでしょうか。

尾上右近さん(以下、右近) 歌舞伎には、重厚な作品も軽やかな作品も、音楽劇もあれば、せりふを中心に進む芝居もある。そうした多彩な演劇のなかで、『仮名手本忠臣蔵』は最もシリアスで、重みのある作品の一つです。

もちろん、笑える楽しい場面もありますが、物語の軸にあるのは武士道。太平の世となり、武士はもう必要ないといわれるようになった時代に、武士たちが活躍した実際の事件を描いています。武士の魂というものが確かに存在したと感じさせる出来事を、歌舞伎という演劇で描くことにも、この作品ならではのアイデンティティーがあると思います。

——江戸時代の武士たちの物語ですが、現代にも通じる心情を感じます。

右近 武士道や武士のあり方だけでは、観客は共感できないと思うんです。でも『忠臣蔵』では、武士たちの本心が垣間見え、人間味を見せる瞬間がある。

討ち入りをする人たちだけをクローズアップした物語ではありません。外伝的なエピソードもあり、僕が勤めさせていただくおかるはその代表格です。思いもかけない不幸に巻き込まれた人たちが、それぞれに悩み、迷いながら生きていく。置かれた立場は違っても、現代の私たちと変わらない思いがある。それが、この作品の普遍性ではないでしょうか。

——右近さん演じる塩冶判官は、大きなドラマの発端となる人です。

右近 (判官が最初に登場する)大序の衣裳の玉子色が象徴するように、おっとりとした温厚な人柄。それが、少しずつ追い詰められていきます。

『忠臣蔵』は男性の物語ではありますが、おかると勘平の物語もそうであるように、要所要所に女性の存在があります。判官には顔世御前という妻がいます。

大序から「四段目」にかけて、顔世御前が美しいがゆえに高師直が横恋慕し、嫉妬がパワーハラスメントへとつながっていく。そこには、公私混同という人間のリアリティーがあります。

それぞれの人物が物語のバトンを繋ぎ紡がれていく。それが『忠臣蔵』なのだと思います。

中村隼人さん

ジャケット ¥231,000、シャツ ¥56,100、パンツ ¥138,600、シューズ ¥50,600、ベルト ¥24,200、スカーフ ¥16,500、ソックス ¥6,600/すべてヨウジヤマモト(ヨウジヤマモト プレスルーム)

——「五段目」「六段目」の勘平は、行き違いの連続から悲劇を背負うことになります。隼人さんは、この役のしどころをどのように感じていますか。

中村隼人さん(以下、隼人) 勘平は猪だと思って人を撃ち、殺めてしまいます。その事件から、歯車が動き始め、さまざまな人物との関わりから勘平の感情は刻々と変化していきます。

「五段目」「六段目」は、時代物と世話物の要素を併せ持つ義太夫狂言。型の約束事も細かくありますが、感情を表現することも大切です。感情に重きを置きすぎるとただリアルに、型ばかりを重視すると芝居が嘘になってしまう。そのバランスがとても難しいと思います。

型を型と見せず、嘘のない心の動きを大切にしたいですね。

勘平は、殺めてしまった相手から得た金でよって、討入りに参加できるかもしれないという希望を抱きます。一方で、忠義一途に生きている男で、そのために最愛のおかると別れなくてはならなくなる。そうした勘平の気持ちを丁寧に勤めたいと思っています。

——おかるは、揺れ動く勘平を力強く支える女性ですね。

右近 勘平の一大事に際して、お家や主君のためという思いを持ちながらも、おかるは何より勘平に生きながらえてほしいと願い、そのために自分がすべてを引き受けようとする腹の据わったところがあります。

勘平は、武士という立場と、男という一人の人間としての立場との間で揺れ動いています。そのどちらもなければ、勘平という人物は成り立たない。おかるもそれをわかっていて、人間としての勘平をまるごと受け入れ、包み込む存在なのだと思います。

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この記事を書いた人

杉村道子

編集・執筆 杉村道子

カルチャー系を中心にインタビュー記事を執筆しています。趣味は歌舞伎、落語、ミュージカル、ストレートプレイに小劇場と、ひたすら雑食舞台鑑賞。年に何本見ているのか、最近は怖くて数えていません。

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