【映画とごはん】愛と束縛を描く食卓―2人の未来を左右する3人の女性たち
櫂の母と暁海の母、そして刺繡作家の瞳子(とうこ)さん。若い2人に影響を与え続ける3人の女性の食生活から人物像を紐解きます。

尾野真千子さん演じる、櫂の母・ほのかは、スナックを営むシングルマザー。恋多き性格ゆえに幼少期から櫂を振り回しており、瀬戸内の島へも恋人を追いかけて移住してきました。感情的で、いやなことがあるとお酒に逃げるタイプ。そのため櫂も、酔っぱらった母を介抱し、酒瓶が身近にある生活に慣れてしまっています。

暁海の母・志穂を演じるのは木村佳乃さん。以前は朗らかな性格だったけれど、夫が不倫をして家を出ていったことで心を病んでいます。夫の帰りを信じて、食卓に夫の好物・天ぷらや魚の煮つけをずらりと並べる日もありますが……。場面写真からもわかるように、この役のために木村佳乃さんは激やせ。夫に執着し、娘に依存する母親の姿は鬼気迫るものがありました。

石田ゆり子さんが演じるのは、オートクチュールの刺繡作家・瞳子。庭で育てたレモンを使ったパウンドケーキを焼き、おいしいコーヒーをいれて来客をもてなすような、丁寧な暮らしをする女性です。その自立した生き方に暁海は憧れを抱きますが、実は暁海と瞳子の関係性は複雑。瞳子の、何があっても自分を貫く姿勢は、時に周囲の人を傷つけることもあります。それでも、自分のことで精いっぱいの母に甘えられなくなった暁海が頼ると、ハッとするような言葉をかけてくれる存在です。
対照的な食生活が浮き彫りにするのは、それぞれの不器用な生き様そのもの。過酷な運命に翻弄されながらも、誰かの常識ではなく自分たちの足で歩むことを決めた櫂と暁海の15年間の選択。世間の「正しさ」ではなく、互いのために人生をかける2人の究極の愛の形を、ぜひ劇場のスクリーンで受け止めてみませんか。
この記事のキーワード



