【ここにも注目!】生きて、食べて、生きて

映画全体を通して、食べるシーン、お酒を飲むシーンが多いのが印象に残ります。
いちばんよく食べるのが、満島ひかりさん演じる探偵見習いの聡子。夜勤のアルバイトもしており、働き詰めでお腹がすくため、休憩時間や張り込み中も常になにか食べています。お弁当、おにぎり、カップラーメン、フランクフルト、アイスクリームなどを、大きな口をあけて急いで食べる。聡子が探偵術を学んでいる事務所で調査状況を報告し合う際も、大福やおまんじゅう、あられなどを口に放り込みながらしゃべっています。彼女が働きながら探偵修業をするには、ある理由があるのですが……登場人物のなかでもっとも「生きる」ことに貪欲なことがわかります。

対照的に、ウイスキーばかり飲んでいるのが西島秀俊さん演じる佐竹。家族と向き合うことができずお酒に逃げ、まともな食事をとらずにいる姿は、自分を痛めつけているかのよう。

そして宮藤官九郎さん演じる明野は元料理人で、食べ物を飲み込む力が弱い「新」のために調理方法やレシピを工夫した料理をつくって食べさせます。夜中も2時間おきに起きて子どものケアをする生活で、誰かと話をする機会もなく、食後や買い物中に飲むレモンチューハイが唯一の息抜き。明野の場合は1日でも長く「新」に生きてほしい、そのためにしっかり栄養を摂取させたいという愛情を感じる食事シーンです。
生きるために食べる者、酒に逃げて現実を拒む者、愛する者のために知恵を絞り料理をつくる者。「食べる」という営みを通して浮き彫りになるのは、不器用な大人たちの「小さな命を守る」という思いと祈りです。絶望の果てに彼らが見出す一筋の光を、ぜひ劇場で見届けてください。



