突然の失踪をきっかけに語られ始める「母」の実像
『母をお願い』

申京淑(シン・ギョンスク) 著 安宇植 訳 ¥1,100 集英社文庫
駅で突然行方不明になった母。目撃情報からは母らしき人物の姿が浮かぶが、たしかな手がかりはつかめない。母を失って初めて、残された家族は母からあたりまえのように注がれていた愛情と、自分の人生にかまけて母を二の次にしていたことに気づかされるのだった。長女、長兄、夫、そして失踪した母自身の視点から、それぞれの人生と無垢の愛が再生され、母もまた夢を見て、恋をして、自分を生きたいと思った時間があったことを示す。複数の語り手によって、母の実像が立体的に浮かび上がってくる。
この小説は、韓国文学が世界に注目されるきっかけとなったベストセラーであり、『82 年生まれ、キム・ジヨン』以前の韓国文学を知るうえでも重要な文芸作品といえる。

『〈弱さ〉から読み解く韓国現代文学』
小山内園子 著 ¥1,870 NHK 出版
目次に挙げられた13 作品だけでなく、その関連書籍の紹介も豊富。多彩な作品を取り上げたブックガイドであり、自国の歴史や社会と対峙する韓国現代文学は、時代に翻弄された人々の人生を知る手がかりともなる。
構成・文/杉村道子
※素敵なあの人2026年7月号「私が私らしくあるための物語との出合いを ――素敵世代へ贈る韓国⽂学案内【好奇心の扉】」より
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