「また高い壁だ」と思うからこそ、その先の景色を見たい

写真右から、柚希礼音さん、大貫勇輔さん、KELOさん。
本作で振付・演出を手掛けるのは、国内外で高い評価を受けるKAORIaliveさん。柚希さんにとって、念願だったというコラボレーションです。
「ひとつの作品としてご一緒するのは初めてです。KAORIaliveさんは、舞台上の照明やセットから振り付けまで含めて、全体的な世界観を作ってくださる方。その世界のなかで、どのように私を作ってくださるのか。そのうえで、私はどう表現したいのかを一緒に作っていけたらと思っています」
柚希さんにとっては、今回「新しい表現への挑戦」でもあります。
「どの作品も、新しいことに挑戦している感覚で、毎回『また高い壁だ』って思っています。でも、それを超えた先に最高の景色があると思っているから。恐ろしくもあり、楽しみでもあるんです」
そんな柚希さんが、稽古前の段階ですでに感じているのが、共演者たちと北斎との共通点。
「大貫さん、KELOさんも、自分が求めるものを夢中になって追求している人のように思います。自分に満足せずに歩んでいる方たちと一緒に、北斎が求め続けた人生を研究できるのがすごく楽しみです」
「好きなもの」と「向いているもの」は違った。宝塚で広がった身体表現の可能性
北斎の人生に重なるように、柚希さん自身にも「まだ見ぬ景色」を追い続けてきました。意外にも、ひとつの習い事を1カ月も続けられないような子どもだったという柚希さん。転機となったのが、9歳で始めたバレエでした。
「隣の家の子がバレエをやっていて、『やってみたい』と言ったんです。でも、『あなたはすぐ辞めるから、1年待ちなさい』って言われて(笑)。それでも1年待ってもやりたかったので、9歳のときにやっと習えたんです。『やりたい、やりたい』という気持ちが積もってできたので、初めてバレエだけはものすごく好きになりました」
「私はバレリーナになるんだ」と夢中になっていたものの、成長するにつれて身長が高くなり、組む男性がいなくなっていきます。海外に目を向けようとしていたところ、家族から勧められたのが宝塚でした。そして、宝塚に入ったことで、思いがけず自分の身体の個性が生きる場所を見つけます。
「若いながらも、そのときに『好きなものと向いているものって違うんだな』と実感しました。私の肩幅も大きな手も宝塚で生かせたんです。バレリーナになりたかった頃は、すごく身を縮めてやっていたけれど、自分が持っているものが全部生きる男役というものに出会えた」
さらに、バレエだけではなく、タップ、日舞、モダンダンスなどさまざまな踊りを学び、芝居や歌にも出会ったことで、自分自身への新たな発見がありました。
「私はバレエが好きなんだと思っていたけれど、宝塚でいろんなことを学んで、『私、バレエだけが好きなんじゃなくて、踊ることが好きだったんだ』と気づいたんです」
そして、芝居や歌を学んだことが、現在の身体表現にもつながっています。
「踊りの表現って、ただテクニックだけじゃなくて、心を表現するんだということを宝塚で学びました。この『PASSION』で、いまこれを表現できるのも、本当に私がお芝居をしてきたからこそだと思います」
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