お客様と熊本に恩返ししていきたい
西川さんは、熊本地震の復興支援や、建築家の安藤忠雄さんが熊本県に寄贈した「こども本の森 熊本」への寄付など、数多くの社会貢献事業にも尽力されています。
「私も若き日、多くの人に助けられてここまで来ました。恩返しができる立場になったいま、熊本や社会のお役に立ちたくて。私は『できる者がやればいい』と思っています。思いやりややさしさは、循環させなくては意味がありません。子どもたちにはすでに会社を譲りましたから、『これからは自分たちの力でしっかり歩んでね』と伝えてあります。私は私で残りの人生をかけて、できる限りの恩返しをしていきたい。人が喜ぶ姿を見るのが、私にとってなによりの喜びなのです」
社長を退任してからはご褒美みたいな毎日
60歳でお子様たちに経営をバトンタッチし、社長職を退かれてからはどのように日々を過ごされているのでしょう。
「現役時代は忙しくて、5人の子どもたちをきちんと育てられたとは言えません。特に、まだ末の息子が高校生のときに、心の支えであった主人を病で亡くし、私は必死に働く背中を見せることしかできませんでした。しかし、おかげさまで子どもたちも真っ直ぐに育ち、会社を引き継ぐことが叶いました。いまは大きな責任からも、毎日出社することからも解放されて(笑)、本当に楽しくて、まるで人生のご褒美のような毎日を送っています。」
人生の先輩として伝えたい「60代からの生き方」
「60代って、まだまだ元気でしょう?60歳を過ぎたら、すべてにおいてやり残したことがないよう、面白いと思ったことにはなんでもチャレンジするといいと思います。私は一線を退いてから、興味のあった世界遺産をこの目で見て歩こうと決め、エジプトや南米など世界中を旅しました。70代になってからは歌舞伎や落語などの古典芸能に夢中になり、毎月のように足を運んでいました。そしていま、いちばんの生きがいは『再春館製薬所バドミントン部』の応援。試合会場に駆けつけたりして、まさに〝推し活〟のように心から楽しんでいるんですよ」
インタビューを行ったのは本社や工場がある「再春館ヒルトップ」。爽やかな緑が広がり、春の桜、初夏のツツジと、四季折々の植物が美しく咲き誇ります。
穏やかな環境のなかで、満面の笑みを浮かべながら、人生で大切なのは「常に感謝の気持ちを持つこと」「人に喜ばれる存在であること」と語る西川さん。それらは一見、ありふれた言葉のようでいて、実は人生を豊かにする究極の「処方箋」なのかもしれません。
困難に直面しても視点を変えること、そして自分が得た恵みを社会へと循環させていくこと。それは、自分ひとりの幸せを遥かに凌駕する、至高の幸福感を味わわせてくれるものなのだと、西川さんの生き生きとした表情が教えてくれました。

西川さんが孫のように可愛いと言う「くまもと再春館製薬所バドミントンチーム」のエース、山口 茜選手のパネルが本社のエントランスでお出迎え。
お話を伺った人

西川通子さん
西川グループ会長
(前・再春館製薬所 代表取締役)
にしかわみちこ/1943年熊本県生まれ。28歳で九州警備保障を創業し、1982年に再建を任された再春館製薬所の社長に就任。「ドモホルンリンクル」を通信販売で全国展開し、7年で売上100億円を達成。現在は再春館製薬所、九州警備保障、キューネット、桜十字病院などを傘下に持つ西川グループ会長を務める。
撮影/下村一喜
※素敵なあの人2026年9月号「人生の処方箋 【第1回】西川通子さん」より
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