男女問わず、多くの人が発症してしまう「昔はよかった病」。ご機嫌な人生を送るには、いま楽しいことを見つけるのがいちばんのようです。
私自身は過去を振り返って「昔はよかった」と思うことはなく、まあ人間誰しも年を取るのだから、年相応のきれいさを保ちつつ楽しく生きればいい、という楽天主義でいたいと願っているくちだ。多分、経済的に保証のない長年のフリーランス稼業が身に染み込んでいるせいで、将来の不安にいつもおののいていては身が持たないし、人生なるようにしかならないというのを自分に言い聞かせて過ごしてきたからだと思う。
人間70年も生きていれば、誰でも病気になったり、金欠になったり、人間関係がややこしいことになったり、大泣きした夜があるものだ。そういうことを乗り越えていまがあるんだから、上等じゃない? とりあえず、おいしいものでも食べて機嫌よく生きようよ、といのが理想なのだ。
ところが、こんなに便利になった世の中が気に食わず、昔はよかった病に取り憑かれている中高年者が案外多いことに気がついた。それも年金をもらう年になってもなお、ずーっと頑張って働いている人に多いのだ。仕事もテキパキとできて、キャリアの長い優秀な人たちね。多分、その人たちが働き盛りを過ごした時代と違って、いまはあらゆる仕事の過程がデジタル化されて、そのシステムについていけなかったり、自分はもっとやれるのに、満足のいく仕事にありつけなかったりと、理由はいろいろあるのだろう。
「いまの若い人は知らないだろうが、昔はこうだった、ああだった」と、過去を美化して話すのを聞くにつけ、私は、じゃあ昔に戻ったらいいのかと聞きたくなる。
昔話は、笑いのネタとして話す方がいい。どんなに昔が懐かしくたって、過去には戻れないのだから、現状で楽しいことを見つけようよ。
昔はよかった病の人は、自分がいちばん輝いていた時代で意識が止まっているので、メイクアップやヘアスタイルも昔と変わらなかったりする。だが、現実的に肌に張りもなくなってきて毛量も減っているのは事実なのだから、若見えの工夫を取り入れるのもありだ。見た目が軽やかになると、気持ちも軽やかになる。
昔はなかったスマホやパソコンを使いこなすのは難しいが、苦手なものを頭から拒否するのではなく、若い人にどんどん教えてもらい活用してみよう。そして、ネットで予約したおいしいランチでも食べて、ご機嫌に過ごしましょう!
イラスト&文/石川三千花
※素敵なあの人2025年1月号「石川三千花の素敵とそれなりの間にはvol.54」より
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