各界の目利きが注目する器やアート、暮らしの道具を紹介します。今回は造形作家・渡辺 遼さんの服刻的な金属の道具とオブジェを、「gallery &cafe yaichi」店主 矢部龍治さんに教えてもらいました。
お話を伺ったのは……
「gallery &cafe yaichi」店主
矢部龍治さん
都内百貨店やインテリアショップの商品演出を手がけるVMDやスタイリストとして、30年以上活躍。2009年、出身地である埼玉県北本市に住まいと事務所を移し、「gallery&cafe yaichi」を開く。
造形作家・渡辺 遼さんの自然の気配をまとう金属作品
いつか誰かに拾われて、そっと飾りたくなる作品を
かすかな凹凸が月面を思わせるアルミの器、遺跡から出土したような緑青のシェード、振ると心地よい音のするオブジェ……どれも造形作家・渡辺 遼さんの金工作品であり、「ギャラリー&カフェ やいち」の店主、矢部さんが薦める品々です。
JR湘南新宿ラインで新宿から約50分、北本駅から徒歩1分の場所に矢部さんのギャラリー&カフェはあります。閑静な住宅街の一軒家ですが、扉を開けると別世界。古今東西の古道具や手仕事による生活道具が並び、セレクトの素晴らしさに遠方から訪れる人が引きもきらないほど。
それもそのはず、矢部さんは長年VMD (ヴィジュアルマーチャンダイザー)として、都内百貨店を中心に商品演出を手がけてきた目利き中の目利き。その目利きが惚れ込み、過去何度か個展を開催しているのが渡辺 遼さんなのです。
「渡辺さんは鉄や真鍮、アルミなどを用い、日常の小物やオブジェを制作しています。どの作品も落ち葉や小石、木の実など自然の造形物に似た気配をまとって、ただそこにあるだけで美しい。オブジェはもちろん、器のような日用品にも彫刻的な風情があり、生活工芸作家とはひと味違ったアプローチが感じられます」
鍛金の手法で作られる作品は、厚さ1㎜ほどの金属板を木槌で何度も何度もたたいて成形。火で炙るなどして、色に深みを出しているものもあります。緑青の作品に至っては成形後、長野県上伊那郡にあるアトリエの敷地で1年近く雨露にさらすそう。屋外で錆を出しては整え、また錆を浮かせては整え……自然の力を借りながら「石ころのようにいつか誰かに拾われて、そっと飾りたくなる作品」を目指すのだとか。
なるほど、思わず手に取りたくなってしまいます。
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