これまでのシニア層とはセンスも価値観も大きく異なるいまの60代。“新しい大人世代”としてどうありたいか、日々修行中のイラストレーター植草桂子さんのエッセイ。今回は「加齢臭」のお話です。
今年の夏は暑かった。年々暑さが増して気候の変化を切実に感じる時代になった。夏でも午前中は涼しかったかつての日本にはもう戻らないんだろうな。そして、去年とは違う自分自身の変化にも気づかされた夏となった。私も、もう戻れないのかな。
エアコンをつけたまま過ごした夏。それなりに快適に過ごせたが、ちょっと家事をすればじっとり汗をかき、一歩外に出れば灼熱の中で流れる汗をかいた。でも代謝が落ちているから髪の汚れ方や肌のベタつき感が若いころほど気にならない。ま、いいかのレベル。そんなある日、あまりに疲れてシャワーも浴びず「明日の朝お風呂に入ればいいや」とベッドに倒れ込んだことがあった。
そして翌朝、自分の枕カバーの臭いに気づいたとき愕然とした。オバサン? いやこれはオジサンの臭いじゃないの? シャンプーの香りこそついていた私の枕カバーに……オジサンが寝ていたの!? それはまさしくオジサン化した私が寝ていたものだった。
「加齢臭」、それは嫌な響きと嫌な臭い。代謝が落ちたお年ごろこそ、臭い成分を抑える女性ホルモンも減少する。女性ホルモンを戻そうとしないまでも、せめてオジサンになるのだけは避けたいものだ。臭いではなく香りぐらいは取り戻したい。
イラスト・文/植草桂子
※素敵なあの人2024年11月号「植草桂子の気分だけでも大人修行 vol.13」より
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