各界の目利きが注目する器やアート、暮らしの道具を紹介します。今回は伝統の鎬(しのぎ)模様の器を、陶と布 0. 5 gram 店主あらい かずよさんに教えてもらいました。
珈琲時間が待ち遠しくなる安藤大悟さんの鎬(しのぎ)の器
印象的な蓋物は器としても置き物としても秀逸
人ひとりがようやく通れる細い階段の先に、あらいさんの営むギャラリー&ショップ「陶と布0・5gram」はあります。店名の由来はオープン当初から扱っている陶製のボタン1枚の重さ。お気に入りのボタンをつければ、いつもの服ががらりと見違え、ウキウキご機嫌。1g もないボタンのように、暮らしに小さな幸せをくれる器や雑貨を紹介したい。そんな気持ちを込めたそうです。
作品をセレクトする際に大事にしているのは「いい意味での主婦目線。美しさに加えて気負いなく使える丈夫さ、お財布と相談しやすい価格なども吟味しています。美術品のような作品ももちろん素敵ですが、繊細過ぎて緊張してしまうものは、ちょっと困ってしまうから」。
そんなあらいさんが「365日、活躍するはず」と太鼓判を捺すのが安藤大悟さんの器です。
「鎬という日本伝統の装飾技法で描く模様と骨董のような風合い、異国情緒溢れるデザインが代名詞。煮物からエスニック料理、ケーキまでなにを盛っても絵になって、食卓に並べた姿の美しいこと。いつもの料理がまるで違ったものに見えます。三重県に工房を構え、県産イチゴの収穫後の苗から灰釉を作るなど、地産地消や廃棄物の有効利用にも熱心。真摯な人柄も魅力的な作家さんです」
11月の個展ではマグカップや陶製ドリッパー、菓子皿などコーヒーブレイクのための器も多く揃えるそう。
「カップは取っ手の位置や形を微妙に変えているので、ぜひ手になじむ一客を見つけて。〝王様の副葬品〟をテーマに蓋に架空の動物をあしらった器もおすすめです。コーヒー豆や砂糖、小菓子入れにちょうどよく、中身を詰めるとき、蓋を開ける瞬間、どこに飾ろうか迷う時間……さまざまな楽しみを届けてくれます」
一度見たら忘れられない蓋物は「動物の佇まいや、ヘラやカンナで丹念に描く鎬模様が絶妙」とあらいさん。釉薬をかけることで柄の濃淡が際立ち、奥深い質感に。右、トルコブルーが魅惑的な「青キ月光」という名の蓋物はφ9.5×H10㎝ 11,000円。中央は「珈琲貫入」を施した器φ8.5×H9㎝、左、イチゴの葉を釉薬に用いた「メロウ」φ8×H9.5㎝、ともに8,800円。(以下φ=口径、W=幅、D=奥行き、H=高さ)
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