これまでのシニア層とはセンスも価値観も大きく異なるいまの60代。“新しい大人世代”としてどうありたいか、日々修行中のイラストレーター植草桂子さんのエッセイ。
今回は「憧れのグレーヘアじゃなくても白髪を楽しみたい」のお話です。

私は同年代に比べて白髪が少ないようだ。でもあまり嬉しくない。生え際に沿ってうっすら見える白髪が、かえって面倒を引き起こす。いっそグレーヘアになれたらいいのにと思う。
いまの時代、髪色は何色にもできる。ただしグレーヘアだけは自然の成り行きなので、願ってもなれるものではない。老け見えを気にする方もいると思うが、見方を変えればグレーヘアはこの世代のおしゃれアイテムをひとつ多く身に着けているようなものだ。いいなぁ、グレーヘア。
もう30年以上前だが、初井言榮さんという役者さんのポートレートを雑誌で見たとき、私はその髪色に射抜かれた。いつもクセのある意地悪な姑などを演じている人は、グレーヘアに黒いリボンをあしらい、淡いピンクのニットを着た品のいい女優さんだった。若かった私は、そのとき初めて「白髪って、なんて素敵なんだろう!」と思った(グレーヘアなどという言葉は当時知りもしなかったから)。
自分をそれなりに整えておくぐらいのおしゃれはいつもしていたいと思う。ただし、気づくと染めた髪が伸びて根元に白いものが見えたりする……これはまずい。結局、不精も手伝って、白髪染めをやめてみた。憧れのグレーヘアにはなれないが、少ない白髪も悪くない。
白髪を生かしてカラートリートメントを使うことにした。うっすらとやわらかいトーンで白髪だけが染まる。これが結構楽しい。1週間程度で色が落ちるので、いろいろな色をアウター感覚で変えられるのがいい。
なんだかんだ言ったところで、シワは増えるし白髪にもなるしで老化は進むもの。鏡を見るのが楽しいとは言えなくなってきたが、その年代なりのおしゃれの楽しみ方が大切なのだと、60代半ばにしてつくづく思う。
イラスト・文/植草桂子
※素敵なあの人2026年7月号「植草桂子の気分だけでも大人修行 vol.33」より
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