人生の先輩の話を聞く雑誌、『つるとはな』をご存知ですか?
昨年、7年ぶりに第6号となる『ミニ?』が出版されて約1年が経ちました。現代短歌の第一人者である馬場あき子さんや、料理研究家のホルトハウス房子さんの暮らしぶりなど誌面には、素敵世代にとっても先輩となる方々の魅力的な記事が並んでいます。
編集長・岡戸絹枝さんは2014年の創刊時には59歳。それから10余年、岡戸さんが60代をかけて手がけた本作りの話をじっくりと伺います。今回は後編をお届けします。
>>>好奇心の扉・前編はこちら
2014年の創刊以来、『つるとはな』のバックナンバーを揃えたコーナーを設けている書店も少なくないという。創刊号の表紙写真は、ホルトハウス房子さんと夫の故・レイモンドさん。それから10年経っても、『ミニ?』の表紙で微笑むホルトハウス房子さんのチャーミングな表情は変わらないように見える。
『ミニ?』始動のきっかけは99歳の女性との出会い
第5号を刊行した2017年から『ミニ?』まで、なぜ7年間の空白があったのでしょう。
「第5号まで出したところで、私がちょっとお休みしたくなったんです。終わりにするつもりはなかったのですが、その後コロナ禍があり、マスク生活では取材に行っても顔が見えないのは嫌だな……と思っていたら、あっという間に7年が経ってしまいました(笑)」
そんな岡戸さんが『ミニ?』を作ろうと思い立ったのは99歳になる、ある女性との出会いから。趣味であるテニス仲間の70代の女性から「今日は母の誕生日だから、うなぎ食べなきゃ」というひと言を聞き、思わず根掘り葉掘り聞き出した岡戸さん。
「テニス仲間のお母様は月に3回麻雀を楽しまれているとも伺い、ぜひ会いたいとお願いしました。その友人とは『つるとはな』の話をしたことなんて一度もないのに『いいわよ』と快く紹介してくださって。お目にかかったら、もう素晴らしくユニークな方でした。それで、もっとお話を聞きたいと思って。そこから『ミニ?』の構想が動き始めました」
岡戸さんは事前に取材候補に会って、実際に取材をお願いするかどうかを決めることにしているそうです。
「私が行くことが叶わない場合もありますが、担当の編集者がお目にかかってから取材に臨んでいます。『つるとはな』は1年に1冊という刊行ペースだったので、できたことかもしれません。会ってお話をして、その方の人生の話に趣きがあったり個性的だったりすると、取材をしてもっと聞きたくなる。素敵な表情をされていると、いい毎日を過ごしていることが伝わってくるんです」
そして『ミニ?』の取材を始めて岡戸さんが感じたのは、ここ数年で年配の方々の健康年齢が10歳ぐらい上がったのでは?という手応えでした。潑剌とした先輩たちの元気と笑顔が、岡戸さんの背中を押して、『ミニ?』はできあがったと言えるかもしれません。