加賀まりこさんが「じっくりお話ししたい!」と思う素敵な大人と対談する不定期連載『まりこサロン』。今回は、世代を超えて大好評だったNHKドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』での共演が記憶に新しい、俳優の宮沢氷魚さんにお越しいただきました! ドラマでの好演と同じく、おふたりの温かい関係性が話し方や写真撮影中の様子から伝わってくるような素敵な対談となりました。
初共演は達成感いっぱい
加賀さん(以下敬称略) NHKドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』(2025年)の撮影が終わって、10日ぐらいボーッとしてました。
宮沢さん(以下敬称略) 達成感と解放感があるけれど、寂しいですね。
加賀 達成感に浸りつつ、力抜くの大変だった。この感じは俳優生活のなかで初めて。私、こんなに力入ってたんだって。
宮沢 加賀さんは作業している場面も多かったですし、台詞量が多い。
加賀 80代の女優に酷よ(笑)。私は美山鈴、90歳で、宮沢さん演じる羽白司と同居してて。桜井ユキさんが膠原病を患った麦巻さとこ役で、団地に引っ越してくる。隣に住んでいるのが大家さんの鈴。その団地での物語。
宮沢 鈴さんはいい距離感で手助けしてくれてチャーミング。
加賀 一緒に暮らす若い男がいた設定が好きだった(笑)。
宮沢 司は料理もできるし。
加賀 プロデューサーさんから司役が決まっていないと聞いて、「宮沢氷魚さんのほかに考えられない」って言ったの。
宮沢 ええっ、知らなかった。嬉しいです!
加賀 画面にあなたがいると、品のよさが色っぽいのよね。珍しい空気感なの。その辺の男にはない(笑)。
宮沢 ありがとうございます。
加賀 あなたは大河ドラマ『べらぼう』も撮ってるから、侍言葉の田沼意知さんと司と両方やるの偉いなぁと思ってた。
宮沢 朝いちばんで大河を撮って、昼から『しあわせは~』の撮影があったときは、呼吸も姿勢も違うので、切り替えが難しかったですね(笑)。
加賀 大河観てて、あなたが袴はいて畳をススッて歩くときに転ばないかしらって心配しちゃう。裃つけて姿勢を正して、畳のへりを踏まずに歩くの大変よね。そういうのがわかるだけに、よくやってるなと思って。背が高いと余計ね。
宮沢 頭は鴨居ギリギリですし、座るときは地面が遠いので、下を見ずに座るのが最初は大変でした。
加賀 頑張ったね。あなたはお育ちがよっぽどいいのかなぁ。人に嫌われることなんてないでしょ? 人間関係でつらい思いしたことはある?
宮沢 あります。嫌われたくないから頑張ってしまって。
加賀 疲れない?
宮沢 疲れるときはあります。
加賀 最初のロケ地であなたに会ったときに、「僕、2時間待ってるんですよね」って言ったの。
宮沢 はい、団地でした。2月の気温5℃の日に朝早く現地に呼ばれて。撮影は夏のシーンでしたから、半袖のシャツに短パンで凍えてました(笑)。
加賀 あなたは愚痴とか言いそうもないから、それを聞いて、人間らしいこと言うって、安心したのよ(笑)。
宮沢さん シャツ¥38,500/マーガレット・ハウエル、タンクトップ(2枚パック)¥11,000/カーハート WIP(カーハート WIP ストアトーキョー)、 その他/スタイリスト私物
加賀さん ニットカーディガン¥28,600/タバサ、 ワンピース¥29,700/タバサ ヴォワイヤージュ(ともに株式会社パパス)、その他加賀まりこさん私物
互いに印象に残ったふたつのシーン
加賀 私はあなたとのシーンで、つくしの袴をめんどくさいとか言いながらのんびり取っている場面がすごく好きだったの。一発OKだったね。
宮沢 僕も好きでした。鈴さんの髪の毛を切るところも。
加賀 私も好き。ふたりの時間の流れが見えてよかったよね。
宮沢 あのシーンは加賀さんの案でした。入れて大正解。髪を切るのは1回しかできないうえに、人の髪を切ったことがないので、緊張しました。僕が実際に感じた緊張感と、司が鈴さんの髪を切るときの緊張感が上手くリンクしたと思います。
加賀 そうね。スタジオでの撮影だったけど、照明が作る太陽の光が、すごく温かい感じがして素晴らしかった。小道具さんたちの細かい配慮でものを集めてくれて、鈴やさとこの部屋を作ってくれた。今回、みんなの力が合わさって上手くいったよね。
宮沢 どの料理もおいしくて、みんなで食べ尽くしました。
加賀 筍ご飯、みんなおかわりしてたもんね。
Profile 宮沢氷魚さん
1994年生まれ。アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコ出身。主な出演作に、映画『his』『騙し絵の牙』『ムーンライト・シャドウ』『エゴイスト』、ドラマ『コウノドリ』『偽装不倫』『ソロモンの偽証』、舞台『ピサロ』など。現在、NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』に出演中。
Profile 加賀まりこさん
俳優。1943年東京・神田生まれ。高校生のときにスカウトされ、映画デビュー。類のない美しさと高い演技力で、映画、テレビ、舞台などで俳優として活躍。映画『泥の河』や『麻雀放浪記』、NHK大河ドラマ『毛利元就』『江~姫たちの戦国~』など出演作多数。近年も映画やドラマなどオファーが絶えない人気ぶり。
撮影/ 下村一喜 スタイリスト/庄 将司(宮沢氷魚さん)、飯田聡子(加賀まりこさん) ヘア&メイク/KUBOKI〔aosora〕(宮沢氷魚さん)、野村博史(加賀まりこさん) 文/小西恵美子
※素敵なあの人2025年9月号『まりこサロン Vol.15 俳優:宮沢氷魚さん×加賀まりこさん』より
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