「新聞の小さい文字が見えづらくなった」「運転中の信号や標識がぼやけて見える」「なんだか目が疲れやすくて、夕方になるとかすむ……」
60代を迎えて、このような「目のかすみ」を感じることはありませんか? 日常生活での不便さや、「このまま見えにくくなったらどうしよう」という不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
目のかすみは、決して珍しい症状ではありません。しかし、その原因はさまざまで、年齢による変化だけでなく、注意が必要な目の病気が隠れている可能性もあります。そこで60代になると目のかすみが起こりやすくなる原因を探り、日常生活でできるセルフケアをご紹介します。大切な目の健康を守るために、できることから始めてみましょう!
なぜ目がかすむの?60代に多い原因とは?
60代に感じる目のかすみの背景には、主に年齢による自然な変化と、治療が必要な目の病気の主に2つの可能性が考えられます。具体的にはどんな原因があるのか見ていきましょう。
【1】年齢による目の変化(生理的な原因)
年齢を重ねると、からだの他の部分と同じように、目にも変化があらわれます。これらはある程度自然な現象です。例えば次のような変化があります。
ピント調節力の低下(老眼)
目の中のレンズの役割をする「水晶体」が硬くなり、弾力性が失われることで、近くのものにピントを合わせにくくなります。これが老眼です。老眼は手元が見えづらくなるだけでなく、ピント合わせに時間がかかることで目が疲れ、かすみを感じる原因にもなります。
涙の質の変化・量の減少(ドライアイ)
年齢とともに涙の分泌量が減ったり、涙の質が変わって蒸発しやすくなったりします。目が乾くと、表面が傷つきやすくなり、光が乱反射して物が見えにくくなったり、しょぼしょぼしたり、かすんだりする原因になります。
水晶体の濁り(初期の白内障など)
水晶体は年齢とともに少しずつ透明度が失われ、濁り始めることがあります。初期の段階では自覚症状が少ないこともありますが、光がまぶしく感じられたり、全体的に霧がかかったようにかすんで見えたりすることがあります。
【2】紫外線や食生活による影響
長年、紫外線を浴び続けることは、白内障や加齢黄斑変性のリスクを高めることが知られています。また、 目に必要なビタミンAやルテインなどの栄養素が不足すると、目の機能維持に影響が出ることがあります。
【3】注意が必要な目の病気の可能性(病的要因)
目の不調が加齢によるものの場合は深刻に考える必要はありませんが、不調の中には、治療が必要な目の病気が隠れている場合があります。以下のような病気は、放置すると視力低下や失明につながる可能性もあるため、早期発見・早期治療が非常に重要です。
白内障
水晶体が白く濁る病気です。進行すると、かすみやまぶしさが増し、視力が低下します。手術によって視力の回復が期待できる病気です。
緑内障
目の奥にある視神経が傷つき、見える範囲(視野)が徐々に狭くなっていく病気です。多くの場合、初期には自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに進行していることがあります。一度失われた視野は元に戻らないため、早期発見と進行を抑える治療が不可欠です。40歳以上の20人に1人が罹患するといわれています。
加齢黄斑変性
網膜の中心部分である「黄斑」に異常が起こる病気です。物が歪んで見えたり、中心部分が暗く見えたり、視力が低下したりします。欧米では失明原因の上位を占める病気です。
糖尿病網膜症
糖尿病の三大合併症の一つで、網膜の血管に異常が起こり、視力低下や失明の原因となります。糖尿病と診断されている方は、定期的な眼科検診が必須です。