レストランで食事が運ばれてきたら、まずはスマホで料理の写真を撮る……。いまでは当たり前の光景ですが、それが本当にその場でベストな行動か考えてみませんか?
つい最近、おしゃべり好きな友人3人が集まって久しぶりに夜の食事会をした。3人とも、その夜はそれぞれの家庭の夕食作りもなしで、外食を楽しむ気分満々だ。もう初めから飲む、食べる、しゃべる、の飛ばしっぷりがハンパなく、いやぁ笑った笑った。楽しい時間がお開きになって、帰宅してから気がついた。あれっ、料理の写真も3人で一緒に写った写真も1枚もなかったと。
いまでは、同世代の人たちでもほとんどがSNSで近況を発信しているから、どこに行っても人々はスマホをかざして写真を撮っている。いまにして思えば、携帯電話が出まわった初期のころには、食事中の写真撮影、携帯電話でのおしゃべりやメールのやり取りはマナー違反なのではないか、などと議論されたものだ。
ところが、いまではそんなことはお構いなし。誰もがなんの疑問も持たずに、料理が運ばれてくると、まずはスマホで写真を撮る。いや、宣伝になるので(しかもタダで)お店の人が気を利かして「皆さんで写真を撮りましょうか?」などと頼まなくても言われたりすること度々だ。
そんな状況の現在ではあるけれど、先日の友人たちとのスマホを誰も出さなかった食事会が、最近のどの集まりよりも楽しかったことに気がついた。つまりその場がおもしろ過ぎて、その場以外のSNSにアップすることなんて忘れていたという話だ。
思うに、私は心のどこかで、場を読まずに運ばれてきた料理の写真をいちいち撮って、熱いものを熱いうちに食べようとしていた他の人を遮ったり、みんなでおしゃべりしている最中もスマホのチェックをして気もそぞろな人を、ちょっとやだなぁと感じていたのだと思う。
とはいえ、私だって初めて行ったレストランの素晴らしい料理は写真に撮りたいし、実際そうしている。SNSに投稿もするし、思い出として写真に残したいと思う。
ただ、それも時と場合によっては、写真を撮るのをやめた方がいいなと察知する気遣いはあった方が断然いい。なかには、写真なんてどうでもいい人やSNSに興味がないからさっさと料理を食べたい人もいる。それから、プライドの高そうな料理人やかしこまった料亭などでは、写真撮影は一応伺いを立てた方がいい。要は、おいしいものを食べる場では、みんなが気分よくありたいということなのだ。
私がよくやる解決策は、写真撮影が手早く上手な友人に代表して料理を撮ってもらい、「あとでLINEに送ってね」というやつ。スマホのつき合い方は文字通り、スマートにね。
イラスト&文/石川三千花
※素敵なあの人2025年7月号「石川三千花の素敵とそれなりの間にはvol.60」より
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