「あれ、いまなにをしようとしてたんだっけ?」「あの俳優さんの名前、喉まで出かかっているのに思い出せない……」60代を迎えると、こうした「もの忘れ」を経験する場面が増えてくるかもしれません。「年のせいかな」と感じつつも、少し不安になったり、もどかしく感じたりすることもあるのではないでしょうか。
でも、もの忘れは誰にでも起こりうること。とくに年齢による自然な変化もあります。大切なのは、もの忘れの原因を知り、過度に不安にならず、前向きな気持ちで対策を始めることです。
この記事では、なぜもの忘れが起こるのか、日常生活でできる対策についてご紹介します。いきいきとした毎日を送るためのヒントを見つけていきましょう。
60代のもの忘れはなぜ起こる?原因を知って不安を解消
60代になって感じるもの忘れ。その原因はひとつではありません。では、どんな原因があるのでしょうか。
【1】年齢による脳の変化(自然なもの忘れ)
年齢を重ねると、脳の機能も少しずつ変化します。記憶力や情報を処理するスピードが若い頃と同じではないのは、ある意味自然なことです。こうした「年齢によるもの忘れ」の特徴は、「何かを思い出せない」ことはあっても、経験したこと自体を忘れてしまうわけではない点です。
たとえば、「昨日の夕飯に何を食べたかすぐには思い出せないけれど、家族と食事をしたことは覚えている」といった具合です。これは病的なもの忘れとは異なります。
一方で、注意が必要なもの忘れもあります。それは認知症などの病気が原因となっている可能性です。以下のチェックポイントに当てはまることが多い場合は、自己判断せずに専門機関への相談を検討しましょう。
- 体験そのものを忘れてしまう(例:旅行に行ったこと自体を忘れる)
- 時間や場所がわからなくなることがある
- 以前はできていた慣れた作業(料理の味つけなど)が難しくなった
- もの忘れによって、日常生活に支障が出ている
【2】食生活
脳の働きに必要な栄養素(ビタミンB群、DHA/EPA、抗酸化物質など)が不足すると、記憶力や集中力が低下しやすくなります。また、とくに精製された砂糖や炭水化物の摂りすぎは、血糖値の急変動を引き起こし、脳機能に悪影響を与える可能性があります。
【3】睡眠
睡眠中に脳は休息し、記憶を整理・定着させます。睡眠が不足したり質が悪かったりすると、このプロセスが妨げられ、記憶力や集中力が低下します。
【4】社会的なつながり
新しいことを学んだり、頭を使ったりする機会が少ないと、脳機能が低下しやすくなります。また、人とのコミュニケーションが減り、社会的に孤立すると、脳への刺激が少なくなり、認知機能の低下につながる可能性があります。