これまでのシニア層とはセンスも価値観も大きく異なるいまの60代。“新しい大人世代”としてどうありたいか、日々修行中のイラストレーター植草桂子さんのエッセイ。今月は「浴衣」のお話です。
夏の夕方、駅から浴衣を着た若い子たちが溢れ出す。ああ、そうか。今日は花火大会だったっけ。
最近は女の子ばかりじゃなく、男の子の浴衣姿もよく見かける。ちょっと照れくさそうにいつもと違うファッションで待ち合わせるカップルの姿は、なんか微笑ましくて可愛い。
私の住む街は観光地でもあり、なかには外国の女の子が浴衣を着て遊びに来ている。日本の文化を楽しんでもらえているようで、日本のおばさんとしては嬉しくなる。
ところが、大人の浴衣姿はあまり見かけないのだ。たぶん大人のほうが、非日常に対して構え過ぎて浴衣さえ敬遠してしまっているのかも。
かつては夏の日常着だったはずの浴衣だが、確かにいまや花火大会やお祭りのイベント着になってしまった感もある。でも私たち世代こそ、浴衣の似合うお年ごろなのではないかしら。
もう少し若いと色っぽく見えてしまって悪目立ちするし、もう少し年を重ねると病院から出てきちゃったの!?ってなことになりかねない。
この夏は、若い子に負けず60代がかっこいい浴衣姿をご披露してみるのもいいかもね。
イラスト・文/植草桂子
※素敵なあの人2024年8月号「植草桂子の気分だけでも大人修行 vol.10」より
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
この記事のキーワード