各界の目利きが注目する器やアート、暮らしの道具を紹介します。今回は韓国の民画から発想を得たアートを「gallery 蓮依 」店主 尹 英順(ユンヨンスン )さんに教えてもらいました。
庶民の暮らしに寄り添った民画が創作のベース
庶民の暮らしに寄り添った民画が創作のベース
北鎌倉の一角に佇む「g a l lery蓮依」。尹さんのルーツである韓国と、日本の作家の作品を中心に紹介しています。器店からスタートし、現在はアート展も数多く開催。
「美しいもの、心癒されるものを求める人たちが集う場でありたい。蓮依の“依”には依りどころという意味もあるんです」と話します。
そんな日韓のアートや工芸に通じる目利きが「“素敵なあの人”世代に絶大な人気を誇る作家さんがいらっしゃいます」と紹介してくださったのがイ・グミョンさんです。
「朝鮮民画をベースに陶磁器画や陶箱、オブジェなどを制作しています。繊細で女性らしいタッチが特長で、眺めているだけで癒やされる。私の心の清涼剤のような作品です」
民画とは1392年から500年以上続いた朝鮮時代に、庶民に親しまれた絵画のこと。上流階級や宮廷のために描かれた芸術的絵画とは趣が違い、庶民の日常風景や縁起のいい動植物などをおおらかなタッチで描いたものが多いそう。
「家内安全や健康長寿、富や出世を願って家の中に飾られていたんです。グミョンさんは幼い子どもの描く絵が大好きな方で、素朴な民画に子どもの絵のような純粋さ、清らかさを感じて魅了されたといいます。最初こそ古い民画の写しを制作していましたが、いまでは庭の花や蝶、愛猫などグミョンさんの心に響いたモチーフをオリジナリティ溢れる筆致で描いています。民画へのオマージュといえるでしょうか。器と違い、アートはなくても生活に困るものではありません。が、ひとつの作品が暮らしをより豊かにし、生きる力になることもある。グミョンさんの作品も、そんな存在になり得ると思います」
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