各界の目利きが注目する器やアート、暮らしの道具を紹介。今回は、草木染めの織物について、gallery Futamuraの店主・二村智惠子(ふたむらちえこ)さんに教えていただきました。
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その美しさ、軽やかさはまるで羽衣
光佳染織(こうかせんしょく)の着尺と帯地
草木の色彩と手織りの味わいどちらも楽しめる贅沢
「きれいでしょう? 〝光佳染織〟の着尺は肌映りがよく、年齢を問わず楽しく着ていただけます」と「gallery Futamura」店主の二村智惠子さん。上写真の着尺は「80に近い私が合わせてみても不思議と似合う。自分で言うのもなんですが(笑)、白髪に桜色が映えてうっとりしてしまいます」。
「光佳染織」は染織家・横内佳代子(よこうちかよこ)さんと代島光子(だいしまみつこ)さんが立ち上げた工房。「民藝のまち」で知られる長野県松本市にあり、おふたりが「着たい」と思う着尺や帯地を制作しています。草木染めのやわらかな色合い、多彩な手法を駆使して織り上げた緻密な柄は、多くの着物通をうならせるほど。当然、制作には大変な手間がかかり、桜や渋木で染める場合は枝や樹皮を細かく刻んで煮出すことからスタートします。生糸を染液に浸け、水洗いし、媒染、乾燥を繰り返して思った色に染め上げます。
その後、糊づけして木枠に巻き取り、本数と長さを揃えてようやく織機へ。私たちがイメージする機織りの作業は全体の2割ほどで、下準備に多くの時間を費やしています。素材となる生糸は同じく長野県の「宮坂製糸所」の座繰り手引糸(ざぐりてびきいと)を使っています。昔ながらの手法で繭から丁寧に引き出された絹糸は糸本来の縮れを残し、通気性、保温性に富むそう。
「ふっくらとした糸をやさしく丹念に手織りしているので、着心地が軽く疲れ知らず。初めて袖を通した日から着慣れて見えるのが嬉しいですね。糸が持つわずかな凹凸が光を四方に反射するのか、深みのある光沢にも惹かれます。いまから着付けを学ぶのは……と思われるかもしれませんが、素敵世代の皆さんなら私の年齢になるまであと20年近く。着物に親しむ時間は充分にあります。ぜひ楽しんでいただけたらと思います」
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