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顔加工アプリ「盛り」と「盛り過ぎ」の境界線とは?【石川三千花さん・エッセイ】

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顔加工アプリ「盛り」と「盛り過ぎ」の境界線とは? 【石川三千花さん・エッセイ】

最近、当たり前になってきた、写真に写った顔を補正するビューティ系アプリ。お肌ツルツルの若々しい顔にはなるけれど、やり過ぎるとイタイようで……。


あなたはスマホで撮った自分の顔写真を加工しますか? それとも、ぜったいにいじらずに、ありのままの自分を受け入れるタイプ?

よっぽどスマホのアプリ機能に詳しくない人以外は、いまやSNSに投稿しようがしまいが、自分の顔写真の肌補正くらいは誰でもしているのではないだろうか。私だってそう。もはや肌補正した顔がホントウの自分で、シワやシミがあるリアルな自分はなかったかのような錯覚ぶり。人間の思い込み、オソロシイです。

ただし、私にも見栄ってものがあるので、肌がちょっとなめらかになるくらいの加工はするが、目の大きさをでっかく変えたり、顔をほっそり見せるためにその輪郭まで変えたりはしない。そう、素肌がちょっとだけきれいに見えるいい塩梅が、私なりのこだわりなのだ。シワも全部は消さないで、真ん中レベルよりも下くらい。つまり、レベルが真ん中より上でマックスの加工にすると、肌がツルッツルのプラスティック顔になるわけね。それはもう、明らかに人工的で不自然になる。そこまでは欲していないのよね。私にも客観性っつーもんがあるから、人さまから「若見えしたがっているのね」とは思われたくない。これがもうひとつの見栄ってものなのです。

【石川三千花さん・エッセイ】顔加工アプリ「盛り」と「盛り過ぎ」の境界線とは?

ところが、このビューティー系アプリは、若い世代には常識だが、化粧まで思いのままに加工できるので、こういうことに詳しい年配者がいきなり若メイク顔に作り変えたりする。いるんですよ、知り合いが〝頂き女子りりちゃん〟のごとく、アニメのようなつぶらな瞳にマスカラたっぷりでピンクのチーク。それをSNSに投稿したものだから、彼女と同世代の70代がびっくりたまげて、LINEのチャットで噂の的。加工のし過ぎは、整形ではないが一度ハマるとエスカレートするからご用心だ。

それから、いつも疑問に思うことは、自分の顔を加工し過ぎると、実際に人と会って生の顔をさらしたときに、写真とあまりに違う事実にどう対処しているのだろう、ということだ。マッチングアプリなんかに登録するとしたら、多分みんな加工するよね。でも考えてみれば、加工するのが当たり前ならば、そんなことは各自、織り込み済みで、実際に会っても驚かないのかも。や〜、バーチャル(仮想)の世界は刻々と迫ってきているんですね〜。

イラスト&文/石川三千花

※素敵なあの人2024年8月号「石川三千花の素敵とそれなりの間にはvol.49」より
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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この記事を書いた人

石川三千花さん

イラストレーター&エッセイスト 石川三千花さん

映画、ファッションについて独自の観点からイラスト+エッセイを展開。著書に『石川三千花の勝手にオスカー』(集英社)、『勝手にシネマ・フィーバー』(文藝春秋)など多数。

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