葛藤があった実母の介護。いまは実父を支える日々
実母の介護が始まったのは、そのすぐ後だったと言います。
「元気だった母が、小脳が萎縮して全身の筋力が低下する難病にかかっていることがわかりました。父と相談して、介護つき住宅への引っ越しや自宅改修など、環境を整えていきました。
やがて食事も難しくなり、延命の選択を迫られることに。痩せ細る母を見ることがつらく、胃ろうを選びましたが、その結果10年間の入院生活となりました。いまでも『あの選択でよかったのかな』と後悔する気持ちが消えません。母を見送ったときは『さみしいけど、これで母も楽になれたのかな』と思いました。
そしていまは、ひとり暮らしの父を見守っています。週に1〜2回通い、食事の様子を確認したり足りないものを届けたりしています。
ヘルパーさんには週3回、食事や掃除をお願いしていますが、父は、洗濯などできることは自分でやろうと努めています。ただ、母を見送ってから体力が落ち、生きがいを失ったように感じることもあるため、心配は尽きません」
介護を続けるためには自分の時間も大切に
「介護中は自分の時間もなく、とにかく孤独で、病院へ向かう車の中は唯一声を出して泣ける場所でした。そんな私を支えてくれたのが、誰かと笑いながら食事をする時間。義妹や姪が差し入れを持ってきてくれ、病室で一緒に話をした短い時間が、どれほど救いだったかわかりません。
実際に介護を経験したことで、介護への印象も変わりました。40代のころは、もちろん大変なものだと思いつつも、どこか他人事のように感じていたかもしれません。
しかしいまでは、介護をする方々に『ひとりで抱え込まないで』と伝えたいです。介護に、正解はありません。どんな選択をしても、後悔や迷いは残ることがあります。だからこそ、周囲の言葉に振り回されず、自分が納得できる形にしてほしい。
時代は変わっています。嫁だから、娘だからと背負い込まず、専門家の力を借りながら自分の時間も守ってほしい。それが、長く続く介護を支えるためにとても大切なことだと思います」

イラスト / 植草桂子 構成・文/平井薫子
※素敵なあの人2026年5月号「素敵読者の介護Stories」より
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