これまでのシニア層とはセンスも価値観も大きく異なるいまの60代。“新しい大人世代”としてどうありたいか、日々修行中のイラストレーター植草桂子さんのエッセイ。今回は「美しさと品格」のお話です。
パリ旅行をしている友人にラインを送った「無事に着いた?」。送られてきたのはエッフェル塔の上から撮った街の写真。ハイブランドの本店にも行ったそうだ。初めてのパリ、ひとり旅を満喫している様子でなにより。彼女にとって大病後の旅行なので、私は少し心配していた。
旅行前のラインのやりとりで「パリに行く前に痩せようとしたけど無理だった」というので、「痩せる必要なんてないわよ」と即座に返した。そのままで充分魅力的だし、なによりも健康ならそれでいいじゃない。それに彼女は決して太っているわけではない。私たち世代特有のちょっと贅沢なお肉を身にまとっているだけ。
シニアになった大女優がふっくらしても、若いころとは違った美しさがある。だから私たち世代がなにかしらきれいに見える方法もあるに違いない。無理に贅沢なお肉を脱ぐ必要はないのかも(と、私の頭の中ではいま、自分を励ますことに一生懸命)。
それこそパリの空の下、世界一美しいと称されたカトリーヌ・ドヌーヴは「年を重ねて容姿が変化することを残念に思っていない」と言いきっている。そして美の秘訣は“自分に寛容であること”だそうだ。80歳になった人の言葉は重い。
もちろんかけ離れた存在だけど、60代にもなったらいい加減、容姿基準の判定呪縛から逃れたいものだ。ではこれからの美しさとは? これは生き方の品が基準になるので、とっても難しいこと。でもね、これからでもまだ間に合うなら、ちゃんと品よく生きる努力をしたいものよね。
イラスト・文/植草桂子
※素敵なあの人2024年12月号「植草桂子の気分だけでも大人修行 vol.14」より
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