各界の目利きが注目する器やアート、暮らしの道具を紹介します。今号は高麗青磁の茶器です。
はかなげな佇まいに潜む圧倒的な存在感
お茶好きが高じて、中国茶器がメインのギャラリー&ショップを営む孟さん。「1店目の入谷店を開いて5年、日常的に中国茶楽しむ方が増えてきたと感じます。これまでは実用的な茶器を多く扱ってきましたが、2店目の代々木上原店ではアーティスティックな器にも力を入れています。海外作家を含め、まだ日本で紹介されていない作品を発掘したいですね」と意欲を燃やしています。
そんな孟さんが薦めるのが、韓国の作家・曹 長鉉さんの高麗青磁の茶器。落ち着いた色合いに、薄く歪んでゆらめく形、優美な柄の器もあれば、水玉や突起をあしらった前衛的なものもあり、どれもオブジェのような美しさです。孟さんも「これまでの茶器の枠にとらわれない、自由な意匠に衝撃を受けた」といい、今年3月、「リーフマニア」で開催した日本初の個展も好評だったそう。
そもそも高麗青磁とは朝鮮半島の高麗時代(918〜1392年)に作られた陶磁器のこと。翡翠のきらめきにも似た釉色と、象嵌(ぞうがん)や透かし彫りによる華麗な装飾が特長ですが、曹さんはあえて磁土に陶土を混ぜ、きれい過ぎない穏やかな色と質感に仕上げています。
「飾り気がなく至って素朴。それでいて蓋碗(がいわん)も茶壺(ちゃふう)も非常にモダンな形をしていて面白い。控えめな風合いと斬新なフォルムのギャップが魅力でしょうか。高麗青磁作家であり韓国の人間国宝である父に師事し、伝統技法を身につけたうえで “いまを生きる焼き物” を目指す姿勢も素晴らしい。独特な形に最初はとまどうかもしれませんが、確かな手仕事で使うほどによさを感じると思います。今後も応援し続けたい作家ですね」
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