【古典の様式美と劇団☆新感線の醍醐味が融合】
シネマ歌舞伎『歌舞伎NEXT 朧の森に棲む鬼』
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2024年から2025年にかけて大当たりを取った『歌舞伎NEXT 朧の森に棲む鬼』が新春から早くもシネマ歌舞伎に。全国公開に先駆けて、主人公ライ(松本幸四郎/尾上松也 Wキャスト)と対峙するシュテン役を演じた市川染五郎さんに、その見どころを伺いました。
子どものころから、この作品とライが大好きだったという染五郎さんに、作品に寄せる思いも存分に語っていただきます。
主人公ライの生き様には芝居だからこそ楽しめる魅力がある
歌舞伎の新たなるステージを目指す“歌舞伎NEXT”。その新作として、昨年幕を開けたのが舞台『朧の森に棲む鬼』でした。シェイクスピアの『リチャード三世』『マクベス』を下敷きにした壮麗な世界観が、歌舞伎ならではの趣向や音曲と劇団☆新感線のエッセンスを綯ない交ぜにして斬新に描かれ、大きな話題となりました。
染五郎さんが演じる「シュテン」は、父・松本幸四郎さんと尾上松也さんがダブルキャストで演じる「ライ」と、物語を通して対峙する重要な役どころです。
上演時、19歳とは思えないスケール感と品格のある美しさは熱い注目を集めました。
「シネマ歌舞伎は、歌舞伎のひとつのジャンルだと自分は思っています。上演をただ撮影したものではなくて、演出的な撮影と編集によって完成された新たな映像作品となっているので、舞台をご覧いただいた方にも、また違った視点で楽しんでいただけるのではないでしょうか」と染五郎さん。
実は『朧の森に棲む鬼』は18年前に、Inouekabukishochiku‐mixとして上演された、当時、七代目染五郎だった幸四郎さんがライとして主演を果たした作品です。
「2、3歳のころからこの『朧の森に棲む鬼』の映像を繰り返し観てきました。子どもながら、舌先三寸の嘘によって王にのし上がっていく男・ライが放つ『悪』に心惹かれたんです。現実にあれほどの噓を重ねる人がいたら嫌ですけど(笑)、エンターテイメントとして見ると、自分の思うがままに人を騙し裏切りを重ねて地位を上り詰めていくライの生き様は、気持ちのよさすら感じられる。悪事をやってのけることに、すがすがしいくらい葛藤も悩みもなにもないんです。
あるのは、自分の思いどおりにしてやるという野心だけ。でも、最後には思わぬ裏切りにあって……というストーリーの底には、芝居そのものの魅力があると思います。歌舞伎でも振り切れたような悪役が好きなのは、いま思うとライに影響を受けているのかもしれないですね」



