朗読は「声に出して読む」ことで、文学作品の世界が深く広くなり、いままで知らなかったような自分の声と出合うきっかけにもなると『朗読のレッスン』の著者、松浦このみさんは言います。
元アナウンサーである松浦さん自身が、どのようにして朗読に興味を抱き、惹かれていったのか。その軌跡を辿りながら、物語を読み解き、さらに自分の声で表現する魅力をご案内します。
>松浦このみさんインタビュー〈前編〉朗読はじめてみませんか?物語を「声にする」ことで目覚める表現力
ひとつの作品を一緒に声に出して読むことで起きる奇跡
発表会では、単独で朗読する作品のほか、グループレッスンのメンバーでひとつの作品を読むことがあります。
「これは『分かち読み』といって、文章の叙述部分と登場人物の台詞に分けたりします。叙述部分でも情景を描いている文章と内面のつぶやきで読む人を変えたり、情景の描写部分とその内容にリンクする登場人物の台詞をひとりの人が担当するという構成にしたり。作品によって、その分担は変わるので決まったルールはありません。ただ、この分担を決める段階でとても細やかな読解ができるんです」
情景を挟むことで描かれている物語の局面や、人間関係を表現する会話などを読み解いていくと、作品の構造を理解することにつながるそうです。
「朗読者ひとりひとりがこのプロセスを踏まえて、それぞれが次の人に手渡すようにみんなで言葉や文脈をつないでいく。それが何度も繰り返されることで、ひとりで読んでいるだけでは生まれない表現が生まれるんです。描写が多層になっていくような……合唱のハーモニーに
も似ているかもしれません」
発表会の前に、2〜3か月をかけてじっくり練習できるのもいい時間です。
「どんな作品にも『何度読んでもどう読んでいいかわからない』というところがあるものなんです。その部分をいろんな角度から見ようと、さらに読むうちにパッと摑める瞬間がある。すると、その箇所以外の解釈も変わってくるんです。それは、声に出して表現しようと思って初めて見つけられる朗読の魅力だろうなと思います」
最後に、「長年取り組み続けてきた朗読から、松浦さんはどんなギフトを受け取りましたか?」とたずねてみました。
「作品の中の登場人物、レッスンで出会う方々、公演をともにするアーティストの皆さん、そうした人との巡り合わせでしょうか。多くの人の生き方に触れられることが自分を豊かにしてくれました。そして、自分と違う考え方をする人を理解しようとする粘りみたいなものは出てきたかな、という気がしています。すべてを理解することはできませんが、可能なところまで粘って努力してみたいですね」




