【見どころ2】性別や世代、住む場所による考え方の違いが浮き彫りに

東北地方出身で長男のタモツに対しては、いずれ田舎に戻ってきてほしいという実家の家族からの期待やプレッシャーがかかっていますし、サチの親はいつまでもアルバイトをしながら司法試験を受け続ける夫を持ったサチのことが心配。親世代は「男とは」「長男とは」「夫婦なら〇〇して当たり前」という考えが根強く、世代や地域間のギャップも浮き彫りになります。

実際の家族づきあいだけでなく、サチが担当する離婚裁判の内容やクライアントの主張からも夫婦のすれ違いや悲哀が伝わり、サチの感情ともリンクして物語に深みが感じられます。
【見どころ3】「佐藤さん」同士の結婚が持つ意味とは?

現状、夫婦別姓が認められていない日本では、事実婚を選ばない限り夫婦はどちらかの姓を名乗ることになります。が、劇中の2人は同じ「佐藤」という苗字を持っているので、サチもタモツも「結婚しても佐藤、離婚しても佐藤」で名前は一切変わりません。同僚の篠田(藤原さくら)はサチに「佐藤さんは、ずっと佐藤サチでいられますもんね」と言い、苗字が変わり誰かの奥さんやママと呼ばれることは「違和感なんてもんじゃない」と気持ちをぶつけますが、苗字が変わっていないサチは本当の意味でそれを理解できないでいるのです。

筆者自身、入籍した後に突然、苗字が変わったことへの抵抗を感じて、1週間ほど“入籍ブルー”で自暴自棄になるほど落ち込んだことを思い出します。それは自分でも想像できなかった感情で、苗字が変わるだけで自分が自分でなくなるような喪失感があまりに大きいので驚きました。もちろん、相手の苗字になれてうれしい方も、名前が変わることに何の抵抗がない方もいらっしゃるし人それぞれだと思うのですが、やはり結婚において苗字が変わる瞬間というのは人生の大きな転換期。サチもタモツも相手と同じ苗字であることで、恋人から夫婦になることへの区切りがつきにくかったのかもしれません。
Related



