これまでのシニア層とはセンスも価値観も大きく異なるいまの60代。“新しい大人世代”としてどうありたいか、日々修行中のイラストレーター植草桂子さんのエッセイ。今回は「いつも身近にワクワクを」のお話です。

もう12月号だって。早過ぎやしませんか?
2025年と聞いてからそんなに時間が経った気がしないのに、もう年末のことを考える季節なんだって。
まるで時間に加速がついていくように、年を重ねるとともに1年が早く過ぎていく。この現象を「ジャネーの法則」と言うそうだ。小学生の6年間はかなり長く感じるけど、60代の6年なんて束の間のこと。日々新しい経験を重ねる子どもとは違い、大概の苦楽を経験してしまった60代は、多少のことなどもうどうってことない。要するにちょっとイイことぐらいじゃトキメキもせず、刺激のない日々を送っているだけ。それからすると推しがある人って、つくづく羨ましいと思う。
12月といえば、以前はワクワクしながらクリスマスツリーを出し、脚立に登って窓枠にガーランドまで飾りつけていた。「幾つになってもクリスマスって子どもみたいにワクワクするものね」なんて思っていたけど、いつしか“ワクワク”より“面倒くさっ”が、勝つようになってしまった。一年に一度の歳時用品は、納戸の奥のほう。わが家の納戸はパズルのようにものが入れ込んであるから、余計面倒くさくなってワクワクが奥まで届かない。
しかし納戸の中の手前のものが、そう頻繁に使う必要なものかといえば、そうでもないことに気がつく。まずは必要ないものを処分してワクワクをすぐ手の届くところに入れ直せばいいのだ。これは納戸に限ったことではない。日常的に少しでもワクワクするものは身近にしておくのがいい。脳の中の引き出しも然り。60代のワクワク作りはまず“面倒くさいもの”を捨てるのが近道かも。
「ジャネーの法則」に逆らうには、新しいことに挑戦して脳の活動量を増やすことが重要らしい。そう新しいことばかりできるわけではないから、ちょっとでもワクワクすることをし続けたら怠惰な脳も働いてくれるかもしれない。
今年はいらないものを捨てて、クリスマスの飾りつけを楽しむ気力が湧いてきた。これで私の時間もほんの少し延びてくれるかな。
イラスト・文/植草桂子
※素敵なあの人2025年12月号「植草桂子の気分だけでも大人修行 vol.26」より
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