制作現場の秘話も。ユーミンは90年代の要素を強く出したいと希望
左からKanru Hu(カンル・フア)さん、松任谷正隆さん、ユーミン、GOH HOTODAさん
続いて、制作にかかわったミックスエンジニアのGOH HOTODAさんと、今回の音声合成ソフト「Synthesizer V」の開発者であるKanru Hu(カンル・フア)さんも登壇しました。ステージの2人に加わり、今回のアルバムの制作秘話を語ってくれました。
GOHさんは「Vによるデモを聴き続けるとやはり空気感がないと感じてしまう。でも、松任谷さんから修正した V が届き続けると、段々と成長していっているんですね。さらに V と由実さんの生声が合成され、松任谷さんの編曲力によってハーモニーが生み出されると、人間味が出てきて愛着が湧いてくる。シンセサイザーと由実さんの声ということではなく、由実さんの音楽になってる。一つの作品として出来上がっているなと最後に感じました」とコメント。
今回のアルバムでは自身の過去の歌声を再構築されていることについて「私の場合はキャリアが長くて、人の声は50年前と絶対変わっているのでわかりやすいと思う」とユーミン。制作にあたり、松任谷正隆さんは70年代くらい(ユーミンの歌声)の方がコントラストが出て面白いと思ったもののユーミンが90年代の要素を強く出したいと望んだのだそう。
Vに「荒井由実度」を指示しての高い声を生成するという作業を手掛けたKanru Huさんは「アルバムを聴いて思ったのは、声がリアルかどうかが問題ではなく、アルバム全体を自分が聴いて楽しめるかということ。今回はとても楽しめました」語りました。
最後に、松任谷正隆さんは「最初はただVに変換したらどうなるんだろうというところからだんだん共存のさせ方を考えるようになりました。今回やったプロセスは他のアーティストもいずれ試みると思います。これだけ発展してすごい勢いだから、誰もが自分の声をラーニングさせることが出来るようになるだろうし、そういうソフトにも発展していくだろうし、誰もが可能性が広がる」と、今後の新たな音楽のつくり方の可能性や楽しみについて語りました。
既に公開されている2曲について「新しいのに懐かしい」という感想が圧倒的に多く話題になっていることについて、MCが「狙ったところに落ちているということですね」と言うと、松任谷正隆さんが「しめしめですよ」と笑顔を見せました。
AI時代の音楽シーンもユーミンがリードしていく、そんな期待感が高まるトークイベントは幕を閉じました。
この記事のキーワード




