【見どころ2】玉三郎さんが待ち望んだ光源氏、市川染五郎
「まさに若いときの光源氏そのもの」という市川染五郎さんとの共演も話題です。
――光源氏を演じられた染五郎さんはまさに「光の君」、輝いているようでした。
ここ10年くらいの間、新しい様式の戯曲が生まれればいいなと思って、「できればいつか上演したい」という作品を何本か作ってきました。この『源氏物語 六条御息所の巻』も数年前にすでに脚本を用意して起用する人を待っていたところ、染五郎さんが現れました。彼に合わせてまた脚本を書き直して上演に向かっていきましたが、本当に若いときの光源氏そのままのような気がいたします。
――共演するにあたっては、どんなお話をなさいましたか?
(染五郎さんは)孫みたいな年齢ですが、先輩とか後輩という枠は考えないでくれといいました。私の役者としての意見はあるけども、あなたの意見はなにかと尋ねました。ただ、思うところあったのでしょうけど、その頃はあまりなにも言わなかったですね。話しにくかったのだと思います。私のいないところでスタッフには(自分の思いを)1時間ぐらい話していたと聞きました。私とは2分しか喋らなかったのに(笑)。でも、今年の8月に共演した『火の鳥』では、自分の役についての考えをはっきり言うようになりました。それを脚本家と演出家と相談して、補綴を何度も繰り返して。作っていくことに参加することが彼らの世代にとって、とてもいいことだと思います。
――具体的に何かアドバイスはされましたか?
染五郎さんの意見を聞いて、「スタッフとも私とも自由に話して、あなたも責任のある発言で、責任のある行動で。そして、幕が開いたときに自分が言ったことだからちゃんとやりなさい」と伝えました。私が染五郎さんの年齢のころは1970年代で高度成長期。当時の演劇界は(いまよりも)垣根がなかった時代だったような気がします。スタッフも俳優も、歌舞伎界だけではなく、劇団四季や文学座や俳優座やいろんな方たちとプロダクションの幕を開けました。新派にも行かせていただいて、水谷八重子先生が直接教えてくださったり。そんなふうにいられた時期が自分としては本当に幸せでしたし、年齢を重ねるうちに芝居作りの大きな基礎になっていきました。
【見どころ3】映像だからこそ可能な幻想的な幽玄の世界
舞台では表現しきれないことを映像では可能になり、見る人をより魅了する作品になっているのだそう。
――シネマ歌舞伎として監修されるにあたってどのようなことを大切になさいましたか?
映像と舞台では、お客様の見る感覚が違いますので、(シネマ歌舞伎として)お客様に楽しんでいただくために、映像で見ることを想定してあるシーンは終演後に別撮りをするなど、いまベストのものをお届けしたいという思いで取り組みました。舞台では、お客様の想像力によって成立している場面もありますが、映像ではそのままではわかりにくくなることがありますから。
――具体的にどのようなアレンジをされましたか?
たとえば、光源氏が最初に登場するところは、六条御息所の肩越しに歩いてくる様子が見えるように映像化のために別撮りにしました。それから、六条御息所が生霊になって出てくるところ。舞台では照明が当たっていても生霊だと思って見ていただけるんですが、映像になったら、そうは見えないんです。そこで「映っているけれどもいない人」に見える映像に工夫していただきました。光源氏が「もうここには二度と参らん」と六条御息所に告げるところは、どう編集したら情感が続くかということを考えましたね。実際に舞台で演じているときには、私の視点からは染五郎くんがどういう表情しているかはわからない場面なのですが、彼はとてもいいお芝居をしています。源氏物語の舞台化では美術装置にも趣向をこらしましたが、映像でも美しく見ていただけるよう、さらに工夫しました。公開に向かって一生懸命作ってまいりましたので、皆さん、どうぞご来場くださいますようお願いいたします。
この記事のキーワード
Related
関連記事
-
【50代エンタメ】「MISIAさん」「玉置浩二さん」at日本武道館を満喫!圧倒的な歌唱力をお持ちの2人に魅了されたライブ体験をレポート!
-
【60代エンタメ】1秒も目が離せない! 妻夫木聡主演『宝島』は壮大なスケールと圧倒的熱量で「本当の沖縄の姿」を心に刻む超大作
-
【60代エンタメ】『デスノート THE MUSICAL』ほか日本オリジナルミュージカルが愛される理由とは?その秘密に迫ります!【好奇心の扉・前編】
-
【60代エンタメ】スカーレット・ヨハンソンが新ヒロインに!『ジュラシック・ワールド/復活の大地』はシリーズ初心者でも楽しめる王道エンタメ
-
【60代エンタメ】デミ・ムーアが若さと美に固執する元人気女優を怪演!禁断の再生医療の正体とは!?映画『サブスタンス』が見逃せない!