歌舞伎を映画館で楽しむ「シネマ歌舞伎」。9月26日(金)からは、昨年10月に歌舞伎座で上演され話題となった、新作シネマ歌舞伎 『源氏物語 六条御息所の巻』がいよいよ公開されます。大きなスクリーンに繰り広げられるのは、六条御息所と光源氏、その妻・葵の上との壮麗な三角関係。六条御息所を演じるのは現代女方最高峰の坂東玉三郎さん、そして、光源氏はいま熱い注目を集める花形俳優・市川染五郎さん。公開に先立ち、本作の監修も務められた玉三郎さんに、一千年の昔から現代まで人の心を掴んで離さない六条御息所と光源氏の恋の魅力、そして新作歌舞伎にかける思いを伺いました。
撮影:岡本隆史
ストーリー
時は平安の世。光源氏との子を身籠る葵の上は、謎の病に臥しています。葵上の両親である左大臣と北の方は、物の怪や生霊による祟りを疑い、比叡山の僧に修法を行わせます。果たして、僧は賤しからざる身分の女の気配を感じ取ったのでした。一方、光源氏は美しく、品格と教養を持ち合わせた愛人・六条御息所のもとを訪れます。花見や連れ舞に興じ、久方ぶりの再会を喜ぶふたり。宮中の忙しさゆえの疎遠を詫びる光源氏でしたが、六条御息所は葵の上やその懐妊を嫉み、なじります。光源氏がたえかねて屋敷を去ると、六条御息所は悲しみに暮れ、次第に嫉妬に狂って……。
撮影:岡本隆史
左大臣と北の方は生霊 を鎮めるため、比叡山の座主から人の煩悩を取り払う護摩として焚く芥子の種を渡されます
【見どころ1】凄絶な嫉妬心を光源氏に吐露する六条御息所
撮影:岡本隆史
光源氏を前に、六条御息所は、正室・葵の上と自らの身の上を引き比べて、「日陰者」としての哀切をとめどなく嘆きます。
本作の見どころについて、坂東玉三郎さんにお話を伺いました。
――六条御息所が抑えきれない嫉妬心を光源氏に吐露する場面には圧倒されました。
嫉妬心は誰もが持っている、根源的な感情だと思います。六条御息所は、その嫉妬の塊のようになってしまいますが、だからこそ現代のお客様の心の琴線にも触れる部分があるのではないでしょうか。六条御息所が嫉妬心を隠さずに存分に見せることで、それをご覧になったお客様は自分の心を浄化できる、そんな物語であり舞台だと思います。
――共感するから、見る人は六条御息所に魅力を感じてしまうのですね。
面白いことにね、六条御息所自身は自分が怨霊になっていることを知らないんですよ。そこがね、赦されるところなんじゃないかと思います。源氏物語には、紫の上とか明石の君のような淡く美しい恋物語もあります。それから、たとえば空蝉のように(光源氏が)訪ねたけれどいなかった……では舞台にならないですね(笑)。以前、(源氏物語を現代語訳した)円地文子先生とお話をした時に、「嫉妬心をテーマにした六条御息所が一番物語になりやすい」とおっしゃっていました。物語としてうまくできるところを舞台にするから繰り返し上演され残っていくともいえるでしょう。日本の古典芸能っていい意味で不思議なものだと思います。物語の一番いいいところをだけやって、あとはお客様の想像にゆだねるという和歌のような舞台芸術なんです。オペラならアリアだけ、バレエならパドドゥだけのような……それをお客様が楽しんでくださるというのは、日本独特のものなのかもしれませんね。
撮影:岡本隆史
正室・葵の上と我が子のもとを訪れた光源氏はその様子に異変を見て取り、禍をなす生き霊の存在に気づきます。
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