これまでのシニア層とはセンスも価値観も大きく異なるいまの60代。“新しい大人世代”としてどうありたいか、日々修行中のイラストレーター植草桂子さんのエッセイ。今月は「60 代の楽しみ」のお話です。
65歳の誕生日、ポストに入っていたのは、市役所から送られてきた介護保険被保険者証。素晴らしいタイミングで届くものだなと感心しつつ、同封された書類に繰り返し綴られた“高齢者”という言葉に自分の気持ちが追いつかない。
「はい、今日からあなたはお年寄りでーす!」と軽く突きつけられて、こちらの心中は重くなるという感じ。私と同年代はこの保険証が届いたとき、みんな同じ気分を味わっているようだ。介護保険は絶対に必要だし、ありがたいと思っている。でも昔と時代が変わったいま、65歳からを一括りに高齢者って呼ばれてもね。
確かに50歳ごろまでは、65歳から先はもう“高齢者”だよねと思っていた。高齢者になると、お笑いを見ても、会話をしていても、間の感覚がずれていってしまうのではないかという不安さえ持っていた。
でもね、そんなことないのよね。60代って、まだまだやることもやれることもいっぱいある。それは60代半ばになったいま、自ら確信できること。いい意味で年甲斐もないことをやって楽しもうじゃない。やりたいときが始めどき、さて手始めに何からやってみようかな。実はこの考える時間だけでも楽しいの。
イラスト・文/植草桂子
※素敵なあの人2024年10月号「植草桂子の気分だけでも大人修行 vol.12」より
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