さっぱりと食べられると、食欲がなかなか出ない暑い夏の食卓で人気の梅干し。自家製でも市販品でも、お気に入りのおいしい梅で、暑い夏を乗り切りましょう!
こうも暑い日が続くと、食欲も料理をする気力も起きなくなる夏本番の日々。しばらく冷蔵庫の中で眠っていた梅干しの出番が多くなるのは、こんな真夏の食卓でのこと。
特に私が好んで梅干しを使うのは、素麺のつゆに叩いた梅肉を溶かし入れて、薬味に大葉や茗荷やゴマをたっぷりと使う食べ方。素麺の喉ごしのよさと、梅の程よい酸っぱさで食欲がなくてもスルスルと入ってしまう。サラダや豚しゃぶに、梅ドレッシングとして梅干しを入れるのも夏はいいですよね。
ところで、この梅干しですが、6月くらいの青梅が店頭に並ぶころ、SNSでやたらと目につく〝梅仕事〟というワード。別に梅を使っての手仕事をしている人を批判するつもりはないのですが、なーんか〝梅仕事〟という響きに特別な感情が宿っている感じがして、つい「そんなにエライか梅仕事」とか内心思っちゃうんですよね。
もちろん自分で梅干しを作れば添加物なしだから、安全でおいしく充足感もひとしおなのはわかるが、それを「梅仕事、始めました」などとアピールされてもね〜。なんかそれがすごい仕事みたいに聞こえるけど、実際、梅シロップだの梅ジャムなんか、洗って砂糖入れて瓶詰めにするか煮詰めるか、案外簡単なのよね。
その昔、うちの母も夏になると、庭で梅干しをザルに並べて3日間の土用干しをして、手作りしていたものです。昔の主婦は、梅干しを手作りする人が多かったのでしょう。私が母の作った梅干しがいちばんおいしいと一度褒めてからというもの、毎年、母は手作りの梅干しを送ってくれました。
ところが、ある年、紀州の減塩の南高梅を買って食べたら、これがおいしかった!正直な話、母の作った梅干しよりもおいしく感じたのだ。それ以来、私は母にもう梅干しは送ってくれなくていいと言ってしまったのだが、いまにして思えば、母は「お母さんの手作りの梅干しがいちばんおいしい」といわれて嬉しくて、毎年、作り続けたのだと思う。
私としては、おいしければ市販品でも手作りでもこだわりません。というか、市販品でも十分満足しています。手作りして充実した暮らしをしているという満足感は結構なことですが、味噌を手作りして〝味噌仕事〟などというように、そのワードに酔いしれているのは、ちょっと引きます。
だってさ、梅干しだの味噌だの作らなくたって、毎日のご飯を作る方がよっぽど大変なのよ、こんなに猛暑続きでは!
イラスト&文/石川三千花
※素敵なあの人2025年10月号「石川三千花の素敵とそれなりの間にはvol.63」より
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