最近では、『デスノート THE MUSICAL』『生きる』などの日本オリジナルミュージカルが国内だけでなく世界中から愛されるようになってきました。漫画や小説からミュージカルを立ち上げ、海外での公演も果たしてきたのは、ホリプロ公演事業部。これまでにも、多彩なテーマで作品を手がけてきたプロデューサー井川荃芬さんに、この夏の新作ミュージカル『ある男』についてお話を伺いました!
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ミュージカルだからこそ時空を超え交錯する新作『ある男』
制作進行中の作品は平野啓一郎さんの小説を原作とする『ある男』。中心となるのは〝普通〟の幸せを求め続けた「ある男・X」。そして、〝普通〟の幸せを生きているように装いつつ〝自分とは何者なのか〟もがき続ける弁護士。このふたりは心のうちを誰かに打ち明けられない事情や葛藤を抱えています。
「本心を吐露することができない主人公たちをミュージカルでこそ描きたい、さらにミュージカルだからこそ、謎の男となるXと彼を追う男が対峙し、交錯できると感じました。ミュージカルは、言葉では語れない心の声を表現するとき、歌になり、その感情や決意が音楽に乗ることでより心を打つのだと私は思っています」
この作品は家族や友人、仕事の肩書きから離れて、人は「アイデンティティ」を知ることができるのかと問いかけてきます。
「演出の瀬戸山美咲さんは『複雑な社会のなかでいかに生きていくかというヒントとなる作品』だとも言われています。さまざまな場所でさまざまな人間関係を持たざるを得ない現代。だからこそ、この作品の芯である『自分とは何者なのか、愛にとって過去とはなんなのか』というテーマをミュージカルという新たな表現とともに、見てくださる方の心の奥にお届けしたい。
作曲のジェイソンさんの音楽も素晴らしく、相対する心理の葛藤がミュージカルだからこそとても面白く描かれています。これから本番に向けて磨き上げていきます。ご期待ください」
この夏の新作!ミュージカル『ある男』
「私はいったい誰を愛したんでしょう…」「仮に、彼を“”と呼ぶことにします」
【あらすじ】弁護士の城戸章良(浦井健治)は、かつての依頼者である谷口里枝(ソニン)から「ある男」についての奇妙な相談を受ける。里枝には2歳の次男を脳腫瘍で失い、夫と別れた過去があった。長男を引き取り14年ぶりに故郷に戻ったあと、出会った谷口大祐(小池徹平)と再婚。ふたりの間に新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。
が、ある日、大祐が不慮の事故で命を落とす。悲しみに打ちひしがれていた里枝だったが、夫の死後、長年疎遠だった大祐の兄から衝撃の事実を突きつけられる。それは、愛していた夫「大祐」がまったくの別人だということ。名前も戸籍もすべて偽りだった。城戸は、“X”と名づけた「ある男」の人生を辿るうちに、彼は過去を変えて生きる男たちの姿、その姿とともに自分の存在と意義を問い、この世界の真実に触れることになる。
脚本と演出を手がける瀬戸山美咲さんは「複雑な社会のなかで、人はどうやって生きていくのかというヒントがある作品だと思っています。この繊細な物語を、ミュージカルという、ある意味少し大胆な手法で皆さんにお届けできるのが大変楽しみです」と語る。
原作:平野啓一郎『ある男』(文春文庫/コルク)
音楽:ジェイソン・ハウランド
脚本・演出:瀬戸山美咲
歌詞:高橋知伽江
出演:浦井健治、小池徹平、濱田めぐみ、ソニン、上原理生、上川一哉、知念里奈、鹿賀丈史ほか
【東京公演】2025年8月4日(月)~17日(日)、会場:東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)、お問い合わせ:ホリプロチケットセンター 電話 03-3490-4949
【広島公演】2025年8月23日(土)~24日(日)、会場:広島文化学園 HBG ホール、お問い合わせ:TSS イベント事務局 電話 082-253-1010
【愛知公演】2025年8月30日(土)~31日(日)、会場:東海市芸術劇場 大ホール、お問い合わせ:メ~テレ 電話 052-331- 9966
【福岡公演】2025年9月6日(土)~7日(日)、会場:福岡市民ホール大ホール、お問い合わせ:インプレサリオ 電話 092-600-9238
【大阪 公演】 2025年9月12日(金)~15日(月・祝)、会場:SkyシアターMBS、お問い合わせ:梅田芸術劇場 電話 06-6377-3800
『ある男』
平野啓一郎 文春文庫/コルク ¥924
読売文学賞受賞。2020年には英訳版 “A MAN” も世界に向けて発売された。2022には妻夫木聡主演で映画化、第46回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞。