COLOR/18歳の大学1年生が突然、赤ちゃんのようになった…
井川さんのオリジナル作品の初企画プロデュース作品は、オートバイの事故で記憶喪失になった男性の実話を元にした『COLOR』。3人で演じられる小劇場向きミュージカルでした。
「『記憶喪失になったぼくが見た世界』という坪倉優介さん原作のタイトルが気になり読み始めました。
自分や両親や友人の記憶、『食べる』『眠る』などの感覚さえも失った作者が書かれた、ご飯を初めて見るものとして『ぴかぴか光るもの』『おいしい』と描写するのを読んだとき、これを音楽にのせて表現できたらという思いが湧いたんです。
道を歩いてるだけでも、晴れた空を見るだけでも、記憶を失った彼の目を通したらすべてが新しい世界。大変な経験だけれど、視点を変えることで幸せを感じる生き方もできる、そんなことを感じさせる作品になるんじゃないかなと思いました」
ひとりの編集者が、「オートバイ事故により意識不明の重体に陥った大学生が奇跡的に意識を取り戻すものの、自分や両親、そして言葉や文字、『食べる』『眠る』などの記憶が失われた」という新聞記事を偶然目にする。そこから、どのようにして回復し人生を切り開いていったのか、編集者はその経験を書いてほしいと、その大学生と家族に相談するのだった。
原作:坪倉優介
音楽:植村花菜
歌詞:高橋知伽江・植村花菜
脚本:高橋知伽江
演出:小山ゆうな/初演2022年
初演キャスト:浦井健治、成河、濱田めぐみ、柚希礼音/主人公「ぼく」浦井健治、「母」柚希礼音、「大切な人たち」成河・主人公「ぼく」成河、「母」濱田めぐみ、「大切な人たち」浦井健治というダブルチームによる上演。
「俳優やクリエイティブスタッフからの提案や意見が、活発に交わされた自由な稽古場でした」と、井川さんは当時を振り返る。
『記憶喪失になったぼくが見た世界』
坪倉優介
朝日文庫¥616
回復していく過程を、著者本人が綴るエッセイだけでなく、家族として見守り続けた母の証言も胸を打つ珠玉の手記。