加賀まりこさんが「じっくりお話ししたい!」と思う素敵な大人と対談する不定期連載『まりこサロン』。今回は、世代を超えて大好評だったNHKドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』での共演が記憶に新しい、俳優の宮沢氷魚さんにお越しいただきました! 対談の後半では宮沢さんが抱えているある悩みについて、加賀さんがアドバイス。
殻を破るとイメージが壊れる?
加賀 私があなたのことを初めて見たのは、Eテレの英語の番組『おとなの基礎英語』だった。なんて感じのいい青年と思って、毎週観たの。
宮沢 僕の初めての映像の仕事でした。オーストラリアを旅する料理人の役で、英語と日本語を使い分けて。
加賀 英語が堪能なんだから海外で仕事してよ。
宮沢 海外の仕事、やりたいです。渡辺謙さんが大河ドラマの撮影のときに、「早く海外に視野を向けたほうがいい」と言ってくださいました。でもどこから始めればいいのか……。
加賀 まだ31歳だから。40歳ぐらいまでには、チャンスがあると思う
宮沢 加賀さんが31歳のときはいかがでしたか?
加賀 私ね、もう1回生まれ変わるのなら30代がいいの! 仕事は充実してたし、恋愛もね。いまの知恵を持って30代に戻れるなら(笑)。
宮沢 すごいですよ(笑)。
加賀 でも向こう見ずじゃなくなっちゃう。私は氷魚くんと違って人に嫌われても平気というスタンスで生きてきてるからね。あなたは、人がどう思うだろうとか嫌われたくないってやってたら、狭くならない?
宮沢 窮屈に感じたり、爆発したくなるときもあります(笑)。それを抑え込むのも、どうだろうというのが悩みです。殻を破りたくて。
加賀 無理して殻を破ることはないけど、1回、自分をぶっ壊してみたいって思うことは大事よね。
宮沢 どうしたら殻を破れますか? どんどん破りづらくなってくる気がして。みなさんが抱いているイメージと、僕が築き上げてきたものを壊すのも恐怖心があります。
加賀 イメージって壊すためにあるから、1回壊したって、案外いまのイメージは消えないものよ。私なんかこんなにやさしくていい人なのに(笑)、いまでも怖いイメージを持たれてる(笑)。自分ではザックバランだと思うんだけど、なかなかそうは思ってもらえない。
宮沢 今回の『しあわせは~』でも、最初はみなさんに緊張感がありましたが、3週間ぐらい経つと、加賀さんの愛に惚れ込んで、とても温かい現場になっていきました。本読みの日は、僕の隣に加賀さんがいらっしゃって、いままででいちばん、緊張しました(笑)。
加賀 あら、緊張してたの?「舞台『ピサロ』(21年)観た」って話したじゃない(笑)。あなたの違う面を見てみたいと思う作り手がいて、殻を破れる役がくるかもしれないね。
宮沢 それがいちばん幸せです。どなたかの力と役の力をお借りできるといいですね。
加賀 やってみたい役は?
宮沢 僕と真逆のサイコパスの役でしたが、映画『ヘルツのクジラたち』(24年)でその片鱗がありました。でも、ピンとはこなかったんです(笑)。彼の愛情ややさしさがあったから、急激に変わったときの恐怖心がわかるシーンがありましたが、仕上がりはシンプルでした。
加賀 なかなか芯食ってピタッとくるのは難しいけど、きっといい作品には出合うと思う。でも、私の希望としては、氷魚くんは、しばらくは品のいい、そのエレガントな色気を振り舞いていてほしいな(笑)。
宮沢 僕の理想は40歳、50歳になったときにダンディでいること。ジョージ・クルーニーのような(笑)
加賀 いいねぇ。ちょっとワルくて、ダンディで。私、いままでで一度だけ、松田優作さんと共演したとき、その場にいるだけなんだけど、抱かれているみたいだった。セクシーも大事!
宮沢 セクシーですかぁ(笑)。
宮沢さん シャツ¥38,500/マーガレット・ハウエル、タンクトップ(2枚パック)¥11,000/カーハート WIP(カーハート WIP ストアトーキョー)、 その他/スタイリスト私物
加賀さん ニットカーディガン¥28,600/タバサ、 ワンピース¥29,700/タバサ ヴォワイヤージュ(ともに株式会社パパス)、その他加賀まりこさん私物
撮影中でも笑いが絶えず、ドラマ『しあわせは食べて寝て待て』の役柄そのままのような、やさしい空気が流れるおふたりが印象的でした。