これまでのシニア層とはセンスも価値観も大きく異なるいまの60代。“新しい大人世代”としてどうありたいか、日々修行中のイラストレーター植草桂子さんのエッセイ。今回は「素手洗い」のお話です。
行きつけの美容院でカットをしてもらいながら、ヘアケアのアドバイスをもらう。
「若いときとは代謝が違うから、シャンプーを使うのは2回に1回で大丈夫よ。お湯洗いするだけで充分」
そうなの? ちゃんと汚れが落ちるのかしら? 半信半疑でやってみた。シャンプーを使ったときのサラッと感はないが、翌日かえって髪がまとまりやすい。そしてなによりもシンプルで楽ちん。“洗う”ということから解放された感じ。
体洗いも石けんを使わなくていいという人がいる。確かにいまや皮脂も少なくなったし、浴用タオルやスポンジでゴシゴシ洗っていては、肌が乾燥してしまう。
私は数年前から、全身を素手で洗うようにしている。いわゆる老化現象で腕が上がらなくなったのをきっかけに、ボディソープの泡の力を借りて、背中に手が届くように我流リハビリを始めたのだ。泡のスベりで可動域が広がる。背中の中央まで手を伸ばすことでストレッチになるし、足の指の間も指で洗えば自然とツボ押しになる。
そしてなによりも日ごろから自分の胸を素手で洗うことで、乳がんのセルフチェックができるのだ。あまり汚れが気にならないところは、ササッと手をスベらせるだけだが、まず自分の体を触ってみることが大切。悲しいかな皮脂はなくても皮下脂肪をしっかり確認することになるのだけど。
まあなにはともあれ、髪も体もその年代なりにケアの仕方ってあるものね。そこにセルフチェックができる素手洗いは、ぜひおすすめしたいと思う案件です。
イラスト・文/植草桂子
※素敵なあの人2025年9月号「植草桂子の気分だけでも大人修行 vol.23」より
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