各界の目利きが注目する器やアート、暮らしの道具を紹介。今回は、食卓に笑顔を届けるユーモアたっぷりの器について、黄色い鳥器店 店主 高橋千恵さんに教えていただきました。
可愛いだけじゃない!濵田綾音さんの三島手(みしまで)
使うほどに、よさを実感 可愛い顔をした実力派
シンプルな白磁から色鮮やかな絵つけ皿、かごや民芸品など、目にも楽しい暮らしの道具がギュッと詰まった「黄色い鳥器店」。店主の高橋千恵さんが吟味した品を目当てに、訪れる人が絶えません。自らも窯業専門校で陶芸を学び、厳しくもやさしい目を持つ高橋さんが選んでいるのは「確かな技術で作られたもの」「面白いもの」「ほかではあまり見ないもの」。
「クスッと笑ってしまうような、独創的でウイットに富んだものがうちらしいかな」と話します。
そんな目利きが「独立してまだ3年の作家さんで、面白い三島手を作る方がいます」と紹介してくださったのが陶芸家の濵田綾音さん。「三島手」とは朝鮮半島から日本に渡来した陶器で、象嵌(ぞうがん)による装飾文様が特徴。素地の表面に彫りを入れたり、印花(スタンプのようなもの)を押して文様をつけ、凹んだ部分に色の違う化粧土を埋め込むという手の込んだ器です。
「料理映えして人気があるので作る作家さんも多いのですが、可愛い動物を描いたものなんて初めて! 最初に見たときは〝なんでこんなことしたの!?〟と斬新な発想に驚き、とぼけた動物の表情に思わず笑ってしまいました。すぐに1枚購入し、使い勝手のよさにまたびっくり。薄くて軽くて口当たりがよく、佇まいもいい。しっかりした仕事だと思いました。和洋、どんな料理にも合い、料理を食べ終わった皿に動物の姿が見えると、肩の力が抜けるというか(笑)心が和みます。画力が確かで、可愛いのに甘過ぎないのもいいですね。すっかりうちの定番になり〝使って、よかったから〟とリピートしてくださるお客様も多いんです」
今年は海外での展示も控える濵田さん。これからもっとたくさんの食卓に笑顔を届けてくれるでしょう。
細い線、小さなドット文様まですべて象嵌によるもの。動物柄は掻き落としという技法で描かれています。「絵つけではなく、わざわざ手間のかかる三島手にしているのが面白い」と高橋さん。虎の器はφ21×H5cm 6,500円。取り皿にぴったりのチーターの器はφ16.5×H4cm 4,500円。「作業量を考えたら控えめな価格だと思います」(φ=直径、W=幅、D=奥行き、H=高さ)
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