名作と言われる舞台作品は、心を打つセリフに満ちています(大竹)
中川 かなり大人の物語だと思いますが、大竹さんは子どもながら、どういうところに惹かれましたか?
大竹 麻酔薬を完成させるためには、どうしても人間で試さなくてはいけないということで、加恵と於継が揃って「自分がその実験台になりたい」と申し出る場面が印象的でした。加恵と於継は表面的には、互いの体を労わるような会話を交わします。でも、「だから自分を選んでほしい」と青洲に訴える言葉の内に「あなたのために命を捨てられるのは私」というヒリヒリするような葛藤を感じて怖かったですね。ませていたのかな(笑)。
中川 封建的な家族観のなかにあって、自分なりのプライドを持って生きようとした彼女たちをどう思いますか?
大竹 先日、舞台となった和歌山県紀の川市にある華岡家の墓所を訪ねました。青洲の墓標は大きくて立派。その後ろに加恵さんの小さなお墓、さらにその奥に於継さんのお墓があって、こんなに差をつけなくても……と思うぐらいの違いでした。華岡青洲の業績はもちろんすごいことです。でも、そのために身を投げ打って尽くした母と妻の名前は、有吉さんが物語として描くまでは知られていなかったそうなんです。歴史を女性側から見る、有吉さんの視点は興味深いですね。青洲も、妻と母が争って実験台になっていることは薄々気づいていたはずなのに。
中川 実在の女性を演じられるとき、役作りはどんなアプローチをされますか?
大竹 史料は読みますけれども、あくまでも戯曲が基本です。演出家の方との意見交換を繰り返しながら、一緒に作り上げていくことに尽きますね。
ドレス¥139,700/ダウェイ(メゾン・ディセット)、靴¥68,200/ネブローニ、ネックレス¥316,200/ヒロタカ(ヒロタカ 表参道ヒルズ)
Information
有吉佐和子の不朽の名作「華岡青洲の妻」を公演!
【日程・会場・問い合わせ】
2025年7月26日(土)、27日(日)久留米シティプラザ ザ・グランドホール(☎050-3539-8330)
2025年8月1日(金)~17日(日)新橋演舞場(☎03-3541-2600)
profile
大竹しのぶ
東京都出身、1957年生まれ。1975年 映画「青春の門 -筑豊編-」ヒロイン役で本格的デビュー。以来、日本を代表する演出家や映画監督に信頼される俳優として話題作に出演し続けている。著書に「ヒビノカテ まあいいか4」(幻冬舎)がある。
撮影・インタビュー/中川真人〔magNese〕 スタイリスト/坂本久仁子 ヘア&メイク/新井克英 文/杉村道子
※素敵なあの人2025年8月号「フォトグラファー中川真人のまことのはなしVOL. 15」より
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売を終了している場合があります。
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