これまでのシニア層とはセンスも価値観も大きく異なるいまの60代。“新しい大人世代”としてどうありたいか、日々修行中のイラストレーター植草桂子さんのエッセイ。今回は「ノースリーブ」のお話です。
季節に限らずノースリーブを着る友人が何人かいる。コートを脱ぐとシックなノースリーブのワンピース姿。寒いとか寒くないとか、そんなことどうでもいいらしい。着たいものを着る潔さ。かっこいいなぁ。
確かに彼女たちは海外の仕事も多くて、ちょっと日本人離れした感覚を持っているのかもしれない。それに比べて私はどっぷり日本人のセンスで服を着ている。なんせノースリーブなど、ここ40年近く着ていない。太い二の腕を人前に晒すのが恥ずかしくて。客観的に考えれば「誰が見るんだよ、私の腕など」なのだが。
しかし前述の友人たちだって同年代。若く美しい二の腕を持っているわけではない。それなりの緩やかな腕のラインをしてらっしゃる。でもかっこよく見えるのは、堂々と自分のおしゃれを楽しんでいるから。
もうさ、60代に若く美しいボディラインなんて、ほぼ無理なんだから出しちゃっていいんじゃない? 二の腕、私も。
せめてこの夏から潔くノースリーブを着てみようと思う。これぞまさしく私の遅過ぎる大人修行だ。
イラスト・文/植草桂子
※素敵なあの人2025年8月号「植草桂子の気分だけでも大人修行 vol.22」より
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