デミ・ムーアの“怪演”が話題の映画『サブスタンス』が5月16日(金)より全国公開されます。元トップ女優の主人公が過剰なまでに若さと美に執着する姿を通して、社会に一石を投じるスリリングなホラーエンタテインメント。
この記事では「映画ごはん研究家」の富田夏子がネタバレなしで見どころをピックアップするとともに、食のシーンにもコメントしたコラムとして紹介します。
ここが見どころ
【1】若くて美しい女性が重宝される風潮にもの申す!
<ストーリー>
50歳の誕生日を迎えた元人気女優のエリザベス(デミ・ムーア)。加齢や容姿の衰えのため仕事が減少し、ある再生医療“サブスタンス”に手を出す。その結果、エリザベスと入れ替わるようにして現れたのがスー(マーガレット・クアリー)。若さと美貌に加え、エリザベスの経験を持つスーはたちまちスターダムを駆け上がっていく。一つの精神をシェアするふたりには【1週間ごとに入れ替わらなければならない】という絶対的なルールがあったのだが、スーが次第にルールを破り始める。
『サブスタンス』の監督・脚本を担当したのは、フランス人の女性監督コラリー・ファルジャ。監督自身が「セクシーで、笑みをたたえ、スリムで、若く、美しくなければ、世間の人々に認められない」という考えにとらわれ、40代に突入した頃に人生が終わった絶望感を味わったことから、作品のアイデアが浮かんだのだとか。
正直、若い女性が特にもてはやされる傾向は日本の方が強いという印象があったので、パリ出身であるコラリー・ファルジャ監督もこうした感覚を持つのが少し意外でした。が、10代からエンタメ業界に身を置いてきた監督のリアルな声は、女性の若さと美に対する認識が世界共通のものだということを示しています。そんな社会への風刺を、大胆な表現方法で映像化した作品になっています。
【2】 デミ・ムーアvsマーガレット・クアリー:すべてをさらけ出した女の戦い
「一つの精神をシェアする二つの肉体」として、対照的に描かれるエリザベスとスー。デミ・ムーアとマーガレット・クアリーが、時には一糸まとわぬ姿をさらけ出すこともいとわない熱演を見せています。
デミ・ムーアはこの作品で、45年以上の俳優キャリアで初となるゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞。授賞式では「30年前、あるプロデューサーに『あなたは“ポップコーン女優”だ』と言われたことがある」と過去の悔しい気持ちを吐露しつつ、受賞の喜びをかみしめていました。『ゴースト/ニューヨークの幻』など、1990年代にヒット作に続々出演し、一時は“”ハリウッドで最もギャラが高い女優“として記録を打ち立てていたデミ・ムーアが、年齢による衰えを感じているエリザベスを演じている時点でキャスティング大成功です。
でも、ハイレグのボディスーツを抜群のプロポーションで着こなすデミ・ムーア、とても60代には見えないですし、十分美しいですよね。
一方、若くてスター性のあるスーを演じたのは、パリ・コレクションなどに出演経験のあるモデル出身のマーガレット・クアリー。長い手足と美しい瞳、魅惑的な唇が印象的で、近年クエンティン・タランティーノやヨルゴス・ランティモスといった“鬼才”と呼ばれる監督に相次いで起用されている30歳の注目女優です。エリザベスとスー、デミ・ムーアとマーガレット・クアリー、女同士のバトルも見ものです。
【3】薬によって人間が生まれ変わるエンタテインメント・ホラー
ジャンルとしては「ボディ・ホラー」に分類される本作。幽霊が出るようなホラーではなく、生まれ変わりシーンなど体の変化が少々グロテスクではあります。血が出るのは絶対ダメという方にはおすすめしませんが、エイリアンやゾンビものがOKな方、スリリングな展開を楽しみたい方にはぜひおすすめしたいです。コメディ的な要素もあるので、ホラーなだけじゃなくエンタメ作品として楽しめます。
ラストに向けて怒涛の展開があり、筆者の場合は観終わった後、口が開いたままでしばらく放心状態でした……。
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