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【60代カルチャー】心を揺さぶる作品がいっぱい!60代こそ女性劇作家が面白い理由とは?【好奇心の扉・前編】

描かれる女性を脱却してみずからが描く女性へ

「青い鳥は小劇場を中心に活動していました。1970年代、いわゆるアングラと呼ばれた小劇場の劇団は反体制を掲げていましたが、女性に対しては抑圧的だったといっていいでしょう。女性俳優が演じるのはいつも、癒やしたり励ましたりする母や天使、戦うジャンヌ・ダルク、ファム・ファタール(運命の女)など、男性主人公のために描かれた役割だったのです」

その状況から抜け出し、描かれる側から描く側に向かうべく、1970年から1980年代にかけて、女性主宰の劇団が次々に立ち上げられました。その代表的な存在が青い鳥であり、如月小春さんであり(※2)、渡辺えりさん(※3)の劇団3〇〇(さんじゅうまる/※4)であり、昨年の大河ドラマ『光る君へ』の脚本家大石静さんと永井愛さんが立ち上げた二兎社でした(5)。

「中学生のときに友達から戯曲本を贈られたこともあり、私にとって思い出深い作品は渡辺えりさんの『ゲゲゲのげ』。いじめられっ子の姿と鬼太郎たちや東北の民話的世界が交わる作品で、結末を予測させない独特の詩情が心に残り続けています」

また当時、女性たちの劇作の特徴は喜劇であることでした。その理由を米谷先生は次のように分析しています。

「彼女たちにとって笑いは、女性たちが世間の規範から逸脱するためのエネルギーだったのだと思います。1990年代に入ると、次第に歴史上のテーマに取り組む作品が多くあらわれるようになりました。女性演劇人たちが過去を回想することと生きることの重なりを表現し、同時に作家としての営みを見つめ直す機運が生まれてきたのだと思います。この潮流は現在まで続き、女性史をフェミニズムの視点から掘り起こす作品が多く誕生してきました」

1:公式サイト「青い鳥創業」によると1993年以降 は作・演出「市堂令」という形に限らず、公演ごと に創作スタイルを変えている。https://aoitori.org/
※2:2000年に逝去。
※3:劇団設立時は「渡辺えり子」。
※4:1997年解散、現在はオフィス3〇〇。
5:大石静さんは1991年退団。

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お話を聞いたのは

米谷郁子先生

昭和女子大学教授、バーミンガム大学大学院博士 米谷郁子先生

専門は英文学、およびその後世における校訂・受容・翻案研究。著書に、『愛の技法』『読むことのクィア』(以上、中央大学出版部、共著)、『今を生きるシェイクスピア―アダプテーションと文化理解からの入門』(研究社、編著)など。
「『女性劇作家』といった女性であることのみにアイデンティティを集約してしまう表現には抵抗感もあります。けれども同時に、ここ数十年の日本社会において、女性の劇作家たちが拓いてきた道がたしかにあるということも忘れてはいけません」

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