各界の目利きが注目する器やアート、暮らしの道具を紹介。今回は、原料の調合から手作りしているガラスの器について、日々(にちにち)ギャラリスト 根本美恵子さんに教えていただきました。
光を捉え、景色を織りなす荒川尚也さんのガラスの器
原料の調合から始まるガラスの美しさを味わって
ギャラリーが林立する銀座でギャラリストを務めること20余年、確かなセレクトで目の肥えたお客様を唸らせている根本美恵子さん。「日々」の設立当初から「美しく清らかで、毎日の暮らしに潤いをもたらしてくれる器」を紹介しています。そんな目利きが風光る季節に選んだのは、ガラス作家・荒川尚也さんの器。
「光を通して輝くガラスはドラマティックで、器にさほど興味のない方でも思わず手に取ってしまう魅力があります。なかでも荒川さんの作品は質が高く、グラスや茶杯の口当たりのよさといったら。洗練されて主張し過ぎず、陶器や漆器と並べてもいい景色を作ってくれます。器の醍醐味は取り合わせの妙ですから、そのもの自体が素敵なだけでは残念。料理やほかの器を引き立てる点でも荒川さんの作品はおすすめですね」
ガラスを「光を捉える機器」と考える荒川さんは、素材にこだわる作家でもあります。分業が一般的な業界で自家調合した原料を溶かしてガラスを作り、溶解炉の設計まで手がける作家は稀有な存在。
「僕が窯を構えた40年前の日本には陶磁器こそいいものがありましたが、ガラスの器はマシンメイドの大量生産品がほとんど。そうじゃない、でもバカラのような高級品でもない。折々の光を受けとめ、使う人の心を動かすガラスを作りたくて素材を追求したんです。自分で砂を溶かさないとわからないことがあります」と話します。
「高温で溶けたガラスは手で触れられず、成形には技術、体力、経験、瞬発力などが必須。つくづく大変な素材を扱いながら、常に新しいスタイルを追うバイタリティと尽きないアイデアには脱帽です」と根本さん。
5月の個展でどんな作品と出合えるのか「私自身がいちばん楽しみにしています」。
ここ数年、中国茶器に力を入れている荒川さん。ホウ珪酸ガラスを用いた茶器は耐熱性に優れ、熱いお茶も注げます(急熱急冷はNG)。茶海 W11×D6.5×H10㎝ 9,900円、茶杯 各φ7.5×H7㎝ 4,290円。(φ=直径、W=幅、D=奥行き、H=高さ。手作りのためサイズは作品によって若干異なります)
この記事のキーワード