『戦場のピアニスト』のエイドリアン・ブロディが主演を務めた映画『ブルータリスト』が2月21日(金)より全国公開されます。ホロコーストを生き延びてアメリカへ渡ったハンガリー系ユダヤ人建築家の、30年にわたる数奇な半生を描いたヒューマンドラマ。なんと上映時間215分という超大作です。
人間の光と影、どちらもありのままに描きながら、空白の時間から想像させるシーンも多い今作。2024年度の賞レースを席巻している注目作品の、見どころを紹介します。
ここが見どころ
【1】アカデミー賞10部門ノミネート!上映時間3時間半超えの大作
第81回ヴェネチア国際映画祭での銀獅子賞受賞を皮切りに、第82回ゴールデングローブ賞でも作品賞(ドラマ部門)はじめ3部門を受賞。さらに第97回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞ほか合計10部門にノミネートされ、なかでもエイドリアン・ブロディは『戦場のピアニスト』(2002年)以来、二度目の主演男優賞を受賞するのではないかと注目しています。結果は日本時間の3月3日に発表されるので、賞レースの行方もお楽しみに。
そして驚くのが、3時間35分という上映時間。かなりの長編映画ではあるのですが、最後まで集中力が途切れることなく展開を見守ることができる、骨太なフィクションになっています。途中15分のインターミッションが最初から映画に組み込まれていて、そこできちんと休憩できるので安心してご鑑賞ください。
【2】主人公の光と影、“ありのまま”を描いた人間ドラマ
物語では主人公ラースローの建築に対する美意識や、ストイックな仕事ぶり、家族に対する愛情を描く一方で、彼の人間的な弱さも包み隠さず描かれています。ラースローを、立派過ぎる人間とも、かわいそう過ぎる人間とも断じることなく、“ありのまま”の姿を見せてくれることで、より作品世界に没入することができます。
【3】映像にない「空白の時間」に重みを感じる
ラースローの行動の背景には、収容所での生活やユダヤ人である過酷さがあるはずですが、映画ではホロコーストやナチスが行った残虐なシーンを直接わかりやすくは映し出していません。描かれていない空白の時間や音楽からその重さが伝わってくる演出が見事でした。
そしてラースローが設計した建築物に込めた本当の想いを知るとき、虚をつかれてハッとするのではないでしょうか。ラストはぜひ、劇場でお確かめください。
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