「年齢を重ねてもの忘れがひどくなった」と悩んでいる人はいませんか? もしかして認知症かも、と不安になるかもしれませんが、認知症はいまや画期的な治療薬も承認されている時代。認知症にならないために、どうするべきかを学びましょう。アルツハイマー研究の第一人者新井平伊先生にお話を聞きました。
認知症手前の段階から早めの対策ができるように
「少し前まで、認知症は『早期発見・早期治療』をすることが大切と言われていました。最近はそれが変わり、『早期予見・早期予防』の時代になっています」と新井先生は言います。
以前は状態を「健康」と「認知症」のふたつに分け、「認知症」を早く見つけて治療をするというものでした。ところが最近は「健康」「主観的認知機能低下」「軽度認知障害」「認知症」の4つに分け、まだ認知症になっていない「主観的認知機能低下」「軽度認知障害」の状態から早めに対策をすることが大切だと言われています。
「認知症でいちばん多いアルツハイマー型認知症の原因物質とされる、アミロイドβの脳内蓄積量を可視化する『アミロイドPET』という検査があります。この検査で、認知症手前の軽度認知障害や、本人のみ自覚する主観的な認知機能低下の段階から判定することもできるように」
軽度認知障害は、記憶力や認知機能が少しは落ちているものの日常生活に支障をきたす程度ではない状態。認知症の予備群といえますが、必ずしも認知症になるとは限らないそう。
「主観的認知機能低下や軽度認知障害の段階で適切な対策をすることで、人によっては健常な状態に戻すことができることが少なくないんです。もし認知症に進んでしまっても、進行を緩やかにするための治療を行うことができます。認知症は中期まで進行すると治療が難しいため、予備群の段階で迎え撃つことが大切です」
認知症の治療は日々進化を続けています。新しい薬の研究も進み、2023年には「レカネマブ」、2024年には「ドナネマブ」という認知症治療薬が承認され、公的医療保険の適用対象に。これらの薬は、早期であれば認知症の進行を遅らせることができる画期的な薬です。
「認知症はなったら終わりではありません。認知症と上手につき合うことで、発症後も自分らしく生きていくいことができます。認知症を怖がり過ぎず、予防を心がけるとともに、異変を感じたらすぐ受診しましょう」